どうせならコロナ禍を機に過去の「自分」と「習慣」にサヨナラしよう

2024年「ポストパンデミック期」が始まる
ニコラス・クリスタキス プロフィール

過去の時代に戻ったような生活様式に?

もう一つの変化は、家で過ごす時間が増えたことだ。何百万人もの人々が、生活リズムや場所の割り当てを調整しながら、自宅で仕事を始めた。その他何百万人もの人々も、仕事を失ったために家にいた。さらに、パンデミックは家をもたない人たちの課題も大きく増幅させた。都市生活の利点のいくつか――たとえば、文化施設やワークスペース、カフェ、公共交通機関などが綿密に相互連結していること――が負債のように見え始めた。人々は公共空間からいなくなった。大都市から周辺の郊外や農村部へと脱出する人たちもいた。

こうした新しい生活様式は、いくつかの点で過去の時代を思わせる。何世紀もの間、大部分の人間は都市の中ではなく都市の外に住んでいた。1950年の時点で、都市人口の割合は世界人口の29・5%で、先進国でも55・5%だった。ところが2018年には、この数字はそれぞれ60・4%と81・4%となった。何千年もの間、ほとんどの人々は農場に住み、自分のことは自分で、独力でこなしていた。2020年、多くの世帯がこの様式のいくつかの特徴に戻り、自分の家で自分の家族の世話をするようになった。

異性間の関係においては、自宅学習に関しては主に女性に任されていたが、その他の家庭の義務は男女間で公平に分担されるようになったことがわかった。男性が育児と家事を負担する割合が平均して増えた。また、新しい生活様式では、見知らぬ人や近くの友人と過ごすよりも、親族と過ごすほうがはるかに多くなった。

もちろん、この2020年に、我が国が完全に19世紀の生活様式に戻ったわけではない。しかし、このような局地的で家族的な生活様式は、人類にとってそれほど珍しいものではなかった。

人間が今よりも農耕的な暮らしをしていたときでさえ、現代の都市よりもはるかに条件が悪く密集した都市のあおりを食って、疫病が発生していた。それに、農村生活だけでは人間を疫病から守ることはできない。農業革命以降の暮らし方にかかわらず、人間の生活の特徴を利用するのにウイルスが非常に長けていることを、ある意味で再認識させられる。農村と都市は、人間の進化のなかでおよそ1万年前の遠い過去には存在しなかった。農村も都市も、人類が狩猟採集型の生活を放棄して生まれた形態だった。狩猟採集型生活では、人間の集団ははるかに小さく、人間同士の交流も限られていたので、爆発的なパンデミックが起こりにくかった。

 

驚くほど不潔な人たち

きれいな水がふんだんに供給されているにもかかわらず、アメリカ人は驚くほど不潔な人々だ。8ヵ国の衛生習慣を調査したある商業調査では、手洗いの習慣に関してアメリカ人よりも身についていないのはドイツ人だけだった。おそらく、インドのような国の被験者なら、感染症が与える壊滅的な被害についてよく承知しているだろう。

だが、知識の欠如が主な問題ではない。アメリカ微生物学会のために実施された別の調査では、アメリカ人の手洗い習慣には、公言と観察結果に大きな食い違いがあることがわかった(研究者たちは実際に公衆トイレでの行動を監視した。言い換えるなら、アメリカ人は手を洗うべきだと知っているが、その知識を行動に移していないのだ。これはとくに男性に当てはまる。85件の科学研究の定量的評価では、男性に比べて女性のほうがきちんと手を洗っていることが明らかになった(女性は、マスク着用を含むすべての点でNPIを実施する傾向が50%高かった。

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