どうせならコロナ禍を機に過去の「自分」と「習慣」にサヨナラしよう

2024年「ポストパンデミック期」が始まる
ニコラス・クリスタキス プロフィール

なんでも「自分でやる」のが当たり前に

パンデミックのせいで、家庭でも職場でも、個人の行動傾向や習慣は変化せざるをえなくなった。野放しにされた命取りのウイルス、孤立、経済の減速などが一緒くたになって、自立性が養われるようになった。料理から散髪、自宅のちょっとした修理に至るまで、その他多くの活動でもさらなる自主性が求められた。配管工がウイルスに感染しているかもしれないのに、なぜ危険を冒してまで家に来てもらう必要があるのか? 仕事がないのになぜお金を使うのか? また、医療に以前よりも自己責任をとるようになり、医療施設に行くリスクを考慮に入れて、専門的治療を受けるべきかどうか、以前にもまして慎重に判断を迫られるようになった。

自主性が求められるようになったことで最も恩恵を受けたのは、子どもたちかもしれない。多くの若者の自律性を妨げていたパンデミック前の過干渉な子育て文化とは対照的に、多くの親たちは自宅学習が始まって数週間後に白旗を上げたようで、大人が何もかもコントロールすると言い張ることをやめた。

多くの子どもや親は、子どもたちが家族と今までよりも有意義な時間を過ごすようになり、屋外で遊ぶ時間や親に監視されない時間も増えていると報告した。子どもの自主性を提唱するレノア・スケナジは、2020年の春に「自分の力で挑戦する」という作文コンテストを実施した。その応募作文のなかには、親の厳しい監視下でなくても子どもたちが成長する姿が描かれているものもあった。

ある8歳の女の子は、許可されているよりも遠くまで、そして速いスピードで自転車に乗ったことを活き活きと伝え、10歳の女の子は、自分の衣服を自分で洗濯するようになったことを書いていた。以前はガスレンジを怖がっていた7歳児は自分で卵料理を作るようになった。その新米シェフの作文には誇らしげにこう書かれていた。「1人で料理をしている。オムレツを作ることができる。野菜オムレツも、プレーンオムレツも。一番難しいのは、フライパンの上で卵を割ること。最初に割るときにやけどすることもある」

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出費を減らし、不必要な買い物に行かなくてもすむように、生地からパン作りをしたり、自家栽培を始めたりする人が全米各地で増えた。わたしの住む地域の86歳の女性は、生まれて初めてガーデニングに取り組んだ。彼女は、バケツ1個に土を入れては苗床まで運ぶという作業を、何度も繰り返した。「わたしは庭を作っているだけじゃないの。自分の体も作っているのよ」。ウイルスに感染して病気になる可能性に備えていたのだ。家庭菜園をホームスクールの一環として行っていた家庭もあれば、自分たちが育てた食材を地元の食料配給所や近所の人たちに寄付する家庭もあった。

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