経産省が提出した「驚きのレポート」、じつは日本経済「大転換」の予兆かもしれない…!

村上 尚己 プロフィール

この経産省の提言には、米国におけるブランシャール教授やサマーズ教授などによる、近年の主張が援用されているとみられる。具体的には、経済成長率>金利である限り財政政策を使うコストが小さく、公的債務残高などに制限されずに、経済成長率を高めるために財政政策を積極的に使うことが可能との議論である。

もちろん、バイデン政権が拡張的な財政政策を強化していることにも、こうした経済学者の主張が影響しているだろう。経済とインフレを安定化させる為に、金融緩和政策を支える為に財政政策を機動的に行使できるというのは、かなり説得力がある議論だと投資家目線で筆者は考えている。

 

経済政策を変える動き

ただ、日本の経済政策運営の現場では、長年にわたり「財政健全化」が最優先事項とされ、これがマクロ経済政策運営の根幹になっていたと筆者は見ている。この考えが強固だったから、脱デフレを完全実現する前の時期尚早なタイミングで消費増税が行われ、そして経済成長を重視する安倍政権下でも、2014年から財政政策はほぼ一貫して緊縮方向で作用した。

実際には、総需要不足の状況においては、経済成長を高めて税収基盤を底上げすることが、財政収支を長期的に安定化させる最も確実な手段になると筆者は考えている。安定した経済成長とインフレを実現させるためには、金融政策に加えて財政政策を拡張的に発動させることが必要であることは経済学の教科書が教えるオーソドックスな教えだろう。ところが、日本では、経済学の理論が軽視されて、妥当な経済政策が実現しなかったと言える。

最近の米国による財政政策に関する議論を踏まえて、これまでの日本における政策論とは一線を画す提言が、霞ヶ関において一定の影響力を持つ経産省から示されたことは、注目される動きである。これまでの日本の財政政策のレジームを、経済政策の実務方から変える力が生まれつつある、と言えるかもしれない。

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