2021.09.27

意外な水道水の基準値の根拠…「洗濯」や「お茶の味」も関係していた

『基準値のからくり』6
村上 道夫, 永井 孝志, 小野 恭子, 岸本 充生

亜鉛の濃度を決めたのは「お茶の味」

亜鉛も鉱山廃水や工場廃水のほか、水道管からの溶出などで水道水に含まれることがある物質で、銅と同じく、ヒトにとって必須元素である。亜鉛の場合は、安全性の観点からは水道水の濃度を規制する必要はなく、その基準値は、性状の観点からのみ定められている。

水道水が1mg/L以上の亜鉛を含むと、沸騰させたときに白く濁り、お茶の味が損なわれる。

3mg/L以上では、水が白濁しやすくなり、沸騰すると油状の膜を形成し、不快な渋味が生じる。5mg/L以上になると、お風呂で みおきしたときに表面などに油膜が生じる。

これらを検討した結果、亜鉛においては、お茶の味が損なわれないように1mg/Lが基準値として定められた。なお、WHOの飲料水水質ガイドラインでは、3mg/Lを超えると白濁や被膜によって水が受け入れられなくなる可能性があるとされているだけで、お茶の味に関する記述はない。亜鉛の水道水質基準値は、日本の文化を組み込んだユニークな値といえるだろう。

なお、水質の基準には「環境基準」という、水生生物の生態系を守るために定められた基準値がある。これについては亜鉛の基準値は、河川・湖沼において0.03mg/Lと定められている。水道水質基準(1mg/L)を満たしている水道水でも、環境基準は達成できないのだ。水道水質基準と環境基準では、目的がまったく異なるからである。

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