2021.09.27

意外な水道水の基準値の根拠…「洗濯」や「お茶の味」も関係していた

『基準値のからくり』6
村上 道夫, 永井 孝志, 小野 恭子, 岸本 充生

水道水質基準を決める二つの観点

水道水質基準は、2014年4月現在、51項目が定められている。また、基準とは別に、塩素による消毒も水道法で義務づけられている。

定期的な水質検査によって基準値の超過が判明した場合には、ただちに原因を究明するとともに、必要な対策を講じる、とされている。とくに一般細菌や大腸菌といった「病原性微生物」による汚染や、「シアン」や「水銀」の超過が判明した場合は、給水を停止し、その水を使用している住民へ周知するなどの対応をとると決められている。

これらは水道水の健康(安全性)に関する側面から見た規制だが、水道水は飲むだけではなく、日常生活のさまざまな用途に使われる。そのため水道水質基準には「健康に関する31項目」のほかに、「性状に関する20項目」も設けられている。性状とは、色や味、臭い(安全性とは別)などを指し、飲むうえでの風味や入浴、トイレ、洗濯などのさまざまな利用において支障が起きないと考えられるいちばん低い値が、性状に関する基準として定められている。

では、具体的に水道水質基準の例をいくつか見ていこう。

銅の基準を決めたのは「洗濯」

銅は鉱山排水、工場排水に含まれるだけでなく、給水装置にも銅管が使われていることから、しばしば水道水に溶けこむ。一方で、銅はヒトにとって必須元素でもあり、食品や栄養サプリメントなどから意識的に摂取されることもある。

2003年の基準値改正では、銅の摂取総量が一日10mgまでならば、健常な成人にとって有害な健康影響は見られないとされた。そこで、一日2〜3Lの水道水を飲み、食品や栄養サプリメントから銅を摂取しても、一日当たり10mgの摂取に達しないような濃度として、2mg/L以下という基準が、安全性の観点から定められた。これはWHOの飲料水水質ガイドラインに準拠したものである。

一方、性状の観点からは、洗濯などへの利用と、味覚の面から検討された。水道水中の銅濃度が1mg/Lを超えると、洗濯物に着色が生じる。味覚については、たとえば水道水中の銅濃度が2.5mg/Lを超えると、50%の人が銅特有の渋味を感知できるという。

 こうして、安全性の観点(毒性評価)からは2mg/Lという値が、性状の観点(洗濯物の着色防止)からは1mg/Lという値が示され、最終的には、1mg/Lが採用された。ヒトへの健康影響よりも、洗濯物への影響のほうが低い濃度で生じるため、これが基準値となったのである。

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