2021.09.24
# 社会学

「消費期限」と「賞味期限」——「おいしさ」の基準値の「おかしさ」

『基準値のからくり』3

賞味期限、放射線量、電車内での携帯電話……私たちはさまざまな基準値に囲まれて、超えた/超えないと一喜一憂して暮らしています。しかし、それらの数字の根拠を探ってみると、じつに不思議な決まり方をしているものが多いようです。

そんな不思議な基準値の実情を、「基準値オタク」を自称する俊英研究者4人による書籍『基準値のからくり――安全はこうして数字になった』から抜粋して、全6回の短期連載でお届けします。

基準値のなかでも、私たちが毎日のように目にして気にかける数字は、消費期限や賞味期限ではないでしょうか。これらは何を根拠にして決まっているのでしょうか。そして、これらは食品の安全と、どのような関係があるのでしょうか。

(この記事は2014年6月に刊行された『基準値のからくり』の一部を抜粋したものです)

「二つの期限」を区別しているか

まず「消費期限」と「賞味期限」の違いについて確認しておこう。農林水産省のウェブサイトによれば、消費期限とは「食べても安全な期限」である。対して賞味期限とは「おいしく食べられる期限」である。図のように、これらは品質の劣化が速いか遅いかによって区別する、というのが農林水産省の説明である。

お弁当や生和菓子などの保存がきかない食品に表示されるのが消費期限、加熱処理などが施されていて冷蔵や常温で保存がきく食品に表示されるのが賞味期限というわけだ(なお、期限が意味をもつのは食品の包装を開けるまでの間である)。

では、これらの期限を過ぎてしまった食品は、どうすればよいのだろうか。消費者庁はそれぞれの期限について、次のようにまったく違う対応を呼びかけている。

「期限を過ぎた食品は食べないようにしてください」(消費期限)

「期限を過ぎても必ずしもすぐに食べられなくなるわけではありませんので、それぞれの食品が食べられるかどうかについては、消費者が個別に判断する必要があります」(賞味期限)

つまり、消費期限は食の「安全」を保つための基準として、賞味期限のほうは安全というよりは味が落ちるか否かを気にする人のための目安として定められている。

しかし、これら二つの期限の意味がまったく異なることは、一般にはあまり認識されていないようである。マーケティング会社が実施した「主婦の食品期限の意識調査」(ソフトブレーン・フィールド調べ、有効回答者数479名)で「期限切れでもその食品を食べるか」と尋ねたところ、以下のような回答結果が得られた。

消費期限切れの場合
「切れてから日数が経っていなければ食べる」38.4%
「においが大丈夫なら食べる」18.2%
「加熱するなど再調理して食べる」19.4%
「食べずに捨てている」21.3%

なんらかの工夫をする場合も含めると76.0%の主婦が、消費期限が切れた食品を食卓にのせている。加熱が可能なものが多いこともあるだろうが、消費者庁が食べないように呼びかけているにもかかわらず、意外に食べられているのである。

賞味期限切れの場合
「切れてから日数が経っていなければ食べる」54.1%
「においが大丈夫なら食べる」20.3%
「加熱するなど再調理して食べる」18.8%
「食べずに捨てている」5.2%

こちらは逆に、まだ食べられる可能性が高い食品を数%の主婦が捨てている。

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