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なぜ「お酒は20歳から」に決まったのか?――意外すぎるその理由とは

基準値のからくり1

賞味期限、放射線量、電車内での携帯電話……私たちはさまざまな基準値に囲まれて、超えた/超えないと一喜一憂して暮らしています。しかし、それらの数字の根拠を探ってみると、じつに不思議な決まり方をしているものが多いようです。

そんな不思議な基準値の実情を、「基準値オタク」を自称する俊英研究者4人による書籍『基準値のからくり――安全はこうして数字になった』から抜粋して、全6回の短期連載でお届けします。

(この記事は2014年6月に刊行された『基準値のからくり』の一部を抜粋したものです)

なぜ「お酒は20歳から」に決まったのか?

基準値が定められたプロセスには、じつに意外なもの、興味深いものが多く、その根拠を知ると、驚かされることがしばしばである。たとえば日本では、20歳未満の飲酒は未成年者飲酒禁止法で禁じられているが、なぜ「20歳」という数字に決まったか、みなさんはご存じだろうか。

国税庁のウェブサイトなどには、20歳未満の飲酒は脳の機能を低下させる、臓器に障害を起こしやすい、性ホルモンに異常を起こしやすい、アルコール依存症になりやすい、といった理由が挙げられている。しかしこの説明では、なぜ18歳でも19歳でも21歳でもなく20歳なのか、という疑問は解消されない。なぜ20歳なのだろうか?

その理由は、1947年の青少年禁酒法案に関する参議院会議録に見ることができる。飲酒禁止を25歳未満にまで引き上げるべきだという発案に対し、当時の政府委員はこう答弁している。

「年齢満二十歳以上の者は民法上も完全な能力者であり、公法上は選挙権を有し、国政に参与いたしておる者でありまして……」

つまり、20歳になれば自己責任がとれるなど、法律の面で自立する「成年」となるから、というわけである。すると、新たな疑問が湧いてくる。なぜ成年は20歳と定められたのだろう?

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その根拠は、1876年(明治9年)の太政官布告にまでさかのぼる。当時、欧米諸国が21〜25歳程度を成年年齢と定めていたのに対し、それらの国の文明・制度に学んでいた日本は、より若い年齢を成年とした。その理由が面白い。欧米人と比べ、日本人が「精神的に成熟している」ことと、「平均寿命が短い」ことから、20歳が成年年齢として採用されたのである。

飲酒禁止が20歳未満となったのは、この数字が脈々と使われているからであった。しかし、いまの日本人が欧米人よりも精神的に成熟しているといわれれば首をかしげたくなるし、日本が世界に名だたる長寿国であることを考えれば、なんとも奇妙な気分になる。

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