毎週土曜日にやってくる新鮮野菜の移動販売「ちゃやマルシェ」は、買い物に行くのが大変という声に応えて始まった。

2018年には「団地の近くにお店が少なくて、買い物に行くのが大変」という声を受けて、団地内の空室を活用した惣菜や弁当の販売スペース「やまわけキッチン」をオープン。「ひとりで食事するのが寂しい」というお年寄りのためにイートインスペースもつくった。

「やまわけキッチン」で週に1回コーヒーを販売する〈Yy cafe〉の山中勇也さん。この日は茶山台としょかん主催の「16号棟マルシェ」に出店。

「食器の一部は住民の方々からの寄付、内装作業も住民らがDIYで行いました。それまでイベント参加は女性やお子さんが中心で、男性はコミュニティに馴染みづらいという部分があったのですが、『誰か大工仕事できる人、いませんか~』と声をかけたら、『日曜大工の腕に覚えあり!』というお父さんがたがたくさんいらして(笑)。結局のべ181人もの方々に手伝っていただきました」

「DIYのいえ」はリタイアしたお父さんがたの憩いの場にもなっている。

そうしたお父さんたちの交流の場となっているのが、空室を活用して作った「DIYのいえ」。工具や作業場を無料で借りられるとあって、老朽化した部屋の不具合も自分たちで修理できるようになった。少々ややこしい修繕は専門スタッフが有料で引き受けてくれる「お困りごとサービス」も。今では出張修理に大工仕事が得意なお父さんたちがアルバイトとして参加し、金槌を振っている。

「やまわけキッチン」で知り合ったふたり。お互い将棋好きだと知り、師弟関係に。

大工仕事という共通点を通して、年齢問わず住民が交われる「DIYのいえ」に対して、「やまわけキッチン」は、「誰かと一緒に時間を過ごしたい」と思う人の拠り所だ。この日も年配の住民と小学生の女の子が楽しそうに将棋盤を囲んでいた。ひとり暮らしのお父さん、週末にここで食事をしているうちに、将棋を教えるようになったのだそう。

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使われていなかった団地内の斜面をレモン畑に。収穫したレモンは「やまわけキッチン」でクッキーなどに加工して販売。

「今後は手芸やパソコンなど、住民の特技をシェアできるサロン的な存在になれたら」とは、「やまわけキッチン」の仕掛け人で、日々キッチンに立つNPO法人SEIN(サイン)の湯川まゆみさん。近くの団地で育ち、今は茶山台団地に暮らす生粋の茶山っ子だ。

大阪・堺市の茶山台団地。敷地内には愛らしい道案内が。団地内の空室を活用して設置された「DIYのいえ」で、大工仕事が得意な住民が作ったものだ。

住民のお話を聞く間、隣でニコニコと笑っていた田中さん。「今、団地を仕切って盛り上げているのは住民の方々です。この5年間で、団地の主役は自分たちなんだという意識が強くなってきたと感じています。団地が持っている“住民同士で助け合う”という関係性を生かしながら、自発的なコミュニティを必要に応じてつくっていく。それが、茶山台団地が再生できた秘訣。これからの団地の理想的な姿、可能性なんじゃないかと思っています」

●情報は、FRaU2021年1月号発売時点のものです。
Photo:Tetsuo Kashiwada Text & Edit:Yuriko Kobayashi

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