団地の一角には住民たちが共同で野菜や花を育てる「茶山の庭」が。大工の腕自慢の住民がつくったバードハウスも。

とにもかくにも住民が集まれるスペースを作るのが第一歩だと、長らく使われていなかった団地内の集会所を「茶山台としょかん」として生まれ変わらせることにした。

「“図書館”といっても、住民から寄付してもらった本が申し訳程度にあるだけで、最初は誰も寄り付いてくれませんでした。でも東さんはアイデアマンで、外に手作りのスタンドを出してコーヒーを振る舞ったり、あの手この手で住民さんに溶け込んでいきました」

「このコーヒー、えらいおいしいわぁ」。まず反応したのはご近所さんたち。春休みに入ると遊び相手を探して子どもが集まり始め、ママさんたちも井戸端会議をするように。東さんがここにいる理由が知れ渡ると、次第に悩みや困りごとが寄せられるようになった。

住民の不用品を0円で出品するマーケットも開催。

「最初は相談というより“文句”でしたね。『部屋狭いねん!』とか(笑)。それに対して東さんは『荷物が多すぎるんちゃいます? そしたらみんなで断捨離しましょうか』と。それで週末に『0円マーケット』というのを企画して、持ち寄った不用品を誰でもタダで持っていってねと。それが非常に好評で、5年経った今も開催しています」

文句を言い合うのではなく、一緒に解決し合う関係になればいい。何事も自治会任せにしがちだった住民の意識が変わってきた。

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「あるとき、としょかんに通う小学生の女の子たちから、『ファッションショーやりたいねんけど、レッドカーペットないですか?』と。そんなんどこから調達できんねん! と思いつつSNSで呼びかけてみたら、とある小学校の教頭先生から『うちにあるから貸しますよ』と返事が来て。子どもたちも張り切って、見事にイベントを成功させました」

徐々に芽生えてきた、自治会中心の縦割りではない、目的をともにする住民同士のゆるやかなコミュニティ。東さんやその後を引き継いで2代目“としょ係”となった白石千帆さんは相談役として活動を支え続けた。