睡眠中にアミロイドβが掃除される? 脳の中を流れる「水」の意外な役割

認知症と睡眠、脳脊髄液の最新科学
毛内 拡 プロフィール

甘くないスポーツドリンクのような液体

細胞と細胞の隙間を満たしている液体は「間質液」や「組織液」と呼ばれており、細胞が活動した際に排出されるさまざまな老廃物をリンパ管へと洗い流す役割を持っていると言われています。

【図】細胞間を満たす間質液細胞間を満たす間質液を模式的に示した。間質はいろいろな器官・臓器で共通して持っている構造。細胞と細胞のすきま、組織と組織のすきまには、線維と体液からなる空間が存在する〈Benias et al., Scientific Reports volume 8(2018)を参考に作製〉

脳細胞を取り囲んでいる間質液は、脳脊髄液が脳組織内に染み込んでできたものと考えられます。脳脊髄液の組成は、そこまで甘くないスポーツドリンクのようなもので、ナトリウムやカリウムなどのイオンが溶け込んでいます。じつは、この脳細胞を取り囲む間質液のイオンバランスが脳の電気的活動の元になっているのです。

 

脳の"ゴミ"はどこへいくのか?

脳は基礎代謝の約20%のエネルギーを消費すると言われており、ぼーっとしているときでさえ肝臓や筋肉と並んで非常に活発に働いています。エネルギーを使って働いたあとには当然さまざまな代謝老廃物が発生します。

例えばアミロイドβと呼ばれるタンパク質は、老廃物の一種と考えられており、脳内に蓄積することがアルツハイマー病と関連すると言われています。アルツハイマー病は、主に高齢者がなるとされていて、認知症や記憶障害を伴う深刻な病気です。

脳に沈着したアミロイドβは、別名「老人斑」と言われるとおり、お年寄りのイメージが強いですが、じつは、若い人の脳でもアミロイドβは発生していると言われています。では、健康な脳を維持するために、この脳の中の"ゴミ"はいったいどこへ運ばれているのでしょうか。

長年の謎、脳のリンパ管

先ほど、老廃物を含む間質液は、リンパ管に吸収されると述べました。リンパ管は、全身をくまなく覆っており、私たちの活動によって生じたゴミを洗い流してくれています。

しかしながら、どういうわけか、脳組織でのみ、このリンパ管が見つかっていませんでした。したがって脳がどうやって老廃物を洗い流しているのかは、医学分野でも長年の謎でした。

じつは、この謎を解く鍵は、これまで述べてきた脳脊髄液の流れにあったのです。

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