小鳥遊が語った「時間は存在しない」説

親友の綿来かごめ(市川実日子)を亡くして1年が経った『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ・フジテレビ系、以下『まめ夫』)の世界。時が止まったように過ごしていたとわ子(松たか子)の日常では、以前のように布団が吹っ飛んだり、網戸をベランダから落っことしたりといった、ここではないどこかへ“勢いよく飛び出す”ようなことは起きなかった。

しかし第8話では、弾むゴミ袋や路傍の打ち水、水鉄砲で遊ぶ子供たちなどの“ほとばしる”イメージが再びとわ子の目に映るようになる。

そのきっかけは、第7話で知り合った謎の男――実はしろくまハウジングの株を買収したマディソンパートナーズの法務部長・小鳥遊大史(オダギリジョー)だった――が、「人間にはやり残したことなんかないと思います」として語った、時間にまつわる以下のような考え方である。

小鳥遊「あの、過去とか未来とか現在とか、そういうのって、どっかの誰かが勝手に決めたことだと思うんです。時間って別に過ぎてゆくものじゃなくて、場所っていうか、その……別のところにあるもんだと思うんです。人間は現在だけを生きてるんじゃない。5歳、10歳、20歳、30、40、そのときそのときを人は懸命に生きてて。それは別に過ぎ去ってしまったものなんかじゃなくて。だから、あなたが笑ってる彼女を見たことがあるなら、彼女は今も笑ってるし。5歳のあなたと5歳の彼女は、今も手をつないでいて。今からだって、いつだって気持ちを伝えることができる

だから、亡くなった人を不幸だと思う必要はないし、生きている人は人生を楽しんでいいのだ、と小鳥遊は続ける。この言葉のおかげで、とわ子はかごめを過去に置いてきてしまった後ろめたさや孤独感から解放され、生き残った現在の自分を肯定し、止まっていた時を再び動かすことができるようになるのだ。

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この小鳥遊による「時間は存在しない」とでもいうべきユニークな持論は、理論物理学者のカルロ・ロヴェッリが提唱する「ループ量子重力理論」という学説がベースになっているらしい。

講談社ブルーバックスの「時間の大きさをまじめに測ったら消えちゃったって、どういうこと!?」という記事によると、ループ量子重力理論においては、時間や空間は連続したものではなく、それ以上分けられない最小単位の粒のようなものが飛び飛びに(離散的に)存在している不連続なものと考えるのだという。

したがって時間とは、過去から未来へ一方向に進むストーリーではなく、例えば紙芝居の2枚目と5枚目の関係性を示したものにすぎない、と説明している。