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世界初の機械式時計はいつ作られたのか?…人類と時計の歴史

誰かに話したくなる『時計の科学』3

人類はどのように「時間」を発見し、そして「時計」を作ってきたのか? 時の研究家・織田一朗さんに人類と時計の歴史を5回の連載で解説していただきます。

前回までは人類が初めて作ったといわれる「日時計」から「水時計」「火時計」「砂時計」と順番に見てきました。今回は、植物学者が考えた「花時計」と、世界初の機械式時計についてご紹介します。

(本稿は『時計の科学』の内容を再編集したものです)

本物の花時計とは?

自然を活用した時計の中で、美しく、ロマンチックな雰囲気が漂うのは花時計でしょう。ただ、一般的に花時計と言うと、花壇の上を大きな針が回る時計を指すようですが、これは、花壇時計であって、正しい花時計ではありません。本物の花時計は、植えられている花の開花で、時刻が分かる時計です。

最も有名な花時計は、1750年頃に、スウェーデンの植物学者カール・リンネが、開花や閉花時刻が明確な草花を円状に植えてつくりました。植物には生き延びるための適正な環境がそれぞれあるので、地域と季節が変われば配置する植物も変わりますが、リンネは植物でも時刻を表示できることを立証したかったのです。

カール・フォン・リンネ Photo by iStock

植物が開花するのは、光を感ずるからではなく、体内時計のコントロールによることが実験で確かめられています。生物が生存していくためには、日照や気温など環境の変化に対応しなければなりませんが、生物の体内時計は外部環境のリズムに自分のリズムを合わせる役目をもっています。植物にとって花を咲かせることは、子孫を残し、増やすために重要な作業ですが、風雨にも耐える丈夫な外茎や葉と違って、大切な部分を無防備にさらけ出すことになるため、適切な時期に、なるべく短時間で受粉作業を済ませたいという事情があります。

ちなみにリンネが選んだ草花は、

6時に咲く  オウゴン草
7時に咲く  センジュギク
8時に咲く  ヤナギタンポポ
9時に咲く  ノゲシ
10時にしぼむ ヤブタビラコ
11時に咲く  アマゾンユリ
12時に咲く  トケイソウ
1時にしぼむ チャイルディングピンク
2時にしぼむ ルリハコベ
3時にしぼむ ホークピット
4時にしぼむ セイヨウヒルガオ
5時にしぼむ シロスイセン
6時に咲く  オオマツヨイグサ

です。実際の時間との誤差は30分以内でした。

カール・リンネのこの実践は、生物を専攻する人々に多大な影響を与えました。リンネの影響を受けて、日本の風土でできる花時計を考えたのが、明石市に住む生物学者十亀好雄氏です。明石市は日本標準時の子午線の通る町として有名なこともあって、十亀氏は時間と関係の深い身近な草花を30年にわたって研究し、22科37種の花をその候補に選びました。

ムラサキツユクサは午前5時10分頃に花が開き始め、7時45分頃に開き切ります。
そして、10時半頃には閉じ始め、12時25分頃に完全に閉じます。

マツバギクは午前5時35分頃から開花を始め、9時40分頃から午後1時頃までは満開となり、3時30分には閉じます。

タビラコは午前9時頃から開花が始まり、11時15分頃から12時30分頃までが満開で、午後2時30分頃に閉じます。

 

 
21科30種の昼咲きの花の開花にかかる平均所要時間は2時間25分、閉花の平均所要時間も2時間14分とほとんど同じで、咲き始めから咲き終わるまでの「花の一生」は、平均9時間20分です。

さらに、十亀氏の研究で興味深いのは、夜間の開花についても検証を進めたことで、リンネも出来ていなかった24時間機能する花時計が可能になります。

ちなみに、夜咲きのオシロイバナが咲き始めるのは午後3時15分頃、5時頃には満開となって翌朝の7時30分頃まで咲き続けます。7時30分頃から10時頃にかけては花を閉じ、眠りにつきます。マツヨイグサが咲き始めるのは午後6時35分頃、7時31分頃には満開となり、閉じるのは翌朝の5時20分頃から9時25分頃とのことです。

夜に咲くオシロイバナ Photo by iStock

すべての植物に通ずることではありませんが、開花が体内時計によるもので、機能誤差が30分以内というのは驚きです。

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