2021.06.17
# 精密機器

人類が初めて作った「時計」とは? 人と時計の5000年の歴史

誰かに話したくなる『時計の科学』1
織田 一朗 プロフィール

一見、ラフな精度しか期待できないように見える日時計ですが、設置場所の緯度経度を正確に割り出し、グノモンの角度を調整すれば、表示する時間誤差を30秒以内に追い込むことが可能です。ただ、日時計はあくまでも設置場所の地方時を「不定時法」(季節性を前提に昼間と夜間をそれぞれ6等分する時刻制度)で表示するもので、現代では当たり前になっている「定時法」(季節に関係なく、1日を24等分する時刻制度)による国の標準時との時間差は埋められません。

いずれにせよ、日時計に対する人類の愛着は強く、1300年頃に欧州に機械式時計が出現したあとも、しばらくは併用されたほか、日時計の仕組みを理解するための科学の心や、宇宙へのロマンを求めて、現代でもモニュメントとしてつくられています。

場所を選ばない水時計

日時計は素晴らしい発明でしたが、生活に組み込まれるにしたがって、人々は欠点を痛感するようになりました。日光の十分でない場所や時間、つまり、天空を望めない屋内や、夜間の時間帯、曇天の日には、まったく機能しないからです。

そこで、人類が考え出したのが水時計です。原理は、同じ穴から流れ出る水の量は、時間当たりで一定であることを応用したものです。これも古代人の誰かが、水滴を観察しているうちに、時間と水の量との間に関係を見つけて、時計に応用したのでしょう。基本原理は簡単なのですが、容器の形や溜まっている水の量で水圧が変わり、排出される量が変わってくるために、正確な水時計をつくるのは結構難しいことです。

現存する最古のものは、紀元前1400年頃のエジプトでアメノフィス王のためにつくられた水時計です。内側に目盛りを記した土器の底に穴をあけ、溜まっている水の水面の位置にある目盛りで「時」を読み取る仕組みです。日没とともに、あらかじめ決められている位置まで水を満たし、夜間の時間を計ったものと推察されています。

古代エジプトで使われていた水時計 Photo by gettyimages

ただし、水時計は保守管理に人手が掛かることが難点です。まず、エネルギー源となる水を、かなりの頻度で補給しなければなりませんし、排水溝が詰まらないように管理することが不可欠です。

また、時間の経過を計ることには適していますが、そのままの状態では時刻を読み取ることはできないので、注水を始める時刻を日時計などで確認して計測を始めるか、経過時間を時刻に換算・表示する工夫が必要です。

かつては、「時間は神のもの」と考えられていたため、日時計を管理していたのは僧侶たちでしたが、ギリシャ時代になってからは科学者たちに委ねられるようになります。ギリシャでは紀元前4世紀にプラトンが水時計をつくったのを発端として、科学者たちは当時の物理学、天文学などの科学を駆使し、水時計の改良に取り組みました。アレクサンドロス時代には水量を調整するために83個の穴を持ち、サイフォン、ポンプや圧縮空気などまで採用した大型の水時計がつくられています。

ちなみに、ローマ時代には、裁判の場で水時計が用いられました。検事、弁護人の持ち時間を平等にすることで公正を期したのですが、悪徳弁護人に買収された役人が時計係についた場合には、瓶の中に泥を入れ、意図的に水の流れを遅くすることもあったようです。

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