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優れた指導者に語り継がれる「成功のピラミッド」とは

ほめて伸ばすコーチング(9)
皆さんには、人生を決定づけた監督やコーチとの出会いがあっただろうか? あるいは、あなたのお子さんにはそのような存在がいるだろうか。日本のスポーツ界に目を向けると、哀しいかな確たる理論も持ち合わせず、未だに鉄拳を用いる指導者が存在する。
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チームを成長させる「5つの土台」

1987年から1991年にネバダ州立大学リノ校の主力としてチームを牽引したマット・ウィリアムズは、卒業後間もなく、リノの街で自身のバスケットボール・アカデミーを立ち上げた。小学生から高校生まで、延べ2万5000人以上の少年少女にバスケットボールレッスンを施している。「コーチは教育者でなければならない」というのが、ウィリアムズの持論である

コーチ業に携わるようになったウィリアムズが模範としたのが、元UCLAの名監督、ジョン・ウッデンだ。ウィリアムズは、ウッデンの「ポジティブな指導が、選手を向上させることを忘れてはならない」という言葉を胸に刻んでいる

ジョン・ウッデン氏 Photo by GettyImages
 

2010年6月に99歳で鬼籍に入ったウッデンは、1948年から1975年までUCLAで指揮を執り、同校を10度、全米大学チャンピオンに導いている。

ウッデンは1910年10月14日に、インディアナ州で誕生した。父親が所有する65エーカー(0.26平方キロメートル)のトウモロコシ畑の傍らに建つ住まいには、水道も電気も通っていなかった。兄、そして2人の弟と彼は、母親が底をくり抜いてくれたトマトを運ぶ籠をフープ代わりとし、バスケットボールに勤しむ。

まるで余裕のない暮らしだったが、両親は4人の息子全てに大学教育を受けさせた。ウッデンは12歳の頃、父親から小さなメモを手渡される。そこには、父が生きるうえでの信条としている7つの事柄が書かれていた。

 1、自分に誠実に生きなさい
 2、他者を助けなさい
 3、毎日、自分だけの傑作を創りなさい
 4、良質の本、特に聖書を味わいなさい
 5、素晴らしい、芸術のような友情を築きなさい
 6、お前が生きるうえで、雨宿りができる場所を見付けなさい
 7、神から良き導きや助言を得られるよう、祈りなさい。そして、日々の加護に感謝しなさい

父は言った。

「息子よ、これらに挑戦してごらん」

ウッデンは人生の最期の時までこのメモを財布に入れ、身に付けていた。

考えてみれば、ウッデンは父親が不平を述べたり、誰かを罵ったり、嫌ったりする姿を目にしたことがなかった。父は4人の息子に「そういう行為は自身を傷付けることになる。嘘をついたり、誰かを騙したり、物を盗んだりしてはいけない。また、泣き言、文句、言い訳も禁止だ」と告げた。

次男は父の躾に素直に従った。ある日ウッデンは、こんな忠告も受けた。

「ジョン、他の兄弟より優れた人間になろうなんて思わなくていい。ただな、自分のベストを尽くすんだ。お前は誰かより秀でているかもしれないし、他者がお前よりも優秀なこともある。常にベストを尽くしていれば、そういったことを受け入れられるものだ。でも、努力を怠った人間に、それはできない」

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