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「ベンチで応援するのはスポーツじゃない」日本特有の謳い文句“高校最後”の罪

ほめて伸ばすコーチング(8)
皆さんには、人生を決定づけた監督やコーチとの出会いがあっただろうか? あるいは、あなたのお子さんにはそのような存在がいるだろうか。日本のスポーツ界に目を向けると、哀しいかな確たる理論も持ち合わせず、未だに鉄拳を用いる指導者が存在する。
日本のスポーツ界は変わらなければいけない。好評発売中の『ほめて伸ばすコーチング』から一足早く、スポーツ環境の改善に役立つ提言を公開。

長時間の練習に意味はない

メジャーリーグ・サッカー、ポートランド・ティンバースのトップチームでアスレティックトレーナーとして働く北川太一(36)は、2014年にオレゴン州立大学大学院を卒業し、同チームで大学院生助手アスレティックトレーナーとしてキャリアを積んだ後、現在のポジションを得た。

アスレティックトレーナーの基本的な役割とは、ケガの予防、評価、処置、そしてどのようにリハビリをさせて選手を競技に戻すかだ。

北川との会話中、私はNBAのオールスタープレーヤーだったスティーブ・ナッシュとレイ・アレンの言葉を思い出した。彼らはともにサッカーの経験を持ち、ガードとしてコート上でボールを運ぶ折にピッチでの戦術眼がいかに役立ったかを私に語ったことがある。

現役時代のスティーブ・ナッシュ(左)とレイ・アレン Photo by GettyImages
 

「僕もナッシュとアレンには注目していました。あの2人の動きは完全にサッカーのステップです。スペースの使い方も上手かった。対峙する選手にしてみれば戸惑うし、躱されてしまうんです。NBA選手って、アメリカン・フットボールや野球や陸上をやっていたタイプが多いじゃないですか。陸上をやれば走り方が綺麗になります。連動したスムーズな走り方は、ケガの防止に繋がるんです

アメフト経験者はジャンプの仕方を覚えるし、方向転換も身に付きます。NBAで4度得点王に輝いたアレン・アイバーソンは、高校時代にフットボール選手としても州でナンバーワンでしたよね。ランニングバックの動きをバスケットボールコートで発揮していましたよ。ステップはもちろんですが、相手の軸をずらすフェイントやスピンはアメフト選手ならではのものです。元々の身体能力にアメフトの経験が上積みされて、NBAでも有数のスーパースターになったのでしょう

アスリートの動きからは、競技種目のバックグラウンドだけでなく、国々の文化も垣間見られるという。

「プエルトリコやドミニカら中南米のメジャーリーガーで、セカンドやショートの守備を見ていると、足の運びが独特だな、と感じることがあります。ボールをキャッチするアプローチを見ていても、野球以外から体の使い方を学んでいるように見受けられます。サルサのようなダンスのリズムが体に染み込んでいる気がしますね。ブラジル人のサッカー選手にも、間違いなくサンバが活きていると思います

指導者のオーダーに服従を強いられる日本の高校生アスリートの現状について、北川はこう苦言を呈する。

「日本の学生アスリートは、ほぼ一年中、監督に言われたことに従いますよね。そうしなければ試合には使ってもらえなくなってしまう。でもなぜ、この練習が必要なのか、何のための練習なのか、どういった動きを学んでいるのかという理由を考えずにやり続けてしまっているケースが大半じゃないかな。そして、回数をこなせばいい、という考えが日本には根強く残っています。僕の立場から述べれば、そうじゃないんですよ。

高校に限ったことではありませんが、科学的根拠も理論もなく、過去の自分の経験と感覚のみで指導をしている方がまだまだおられるように感じます。そのせいで、闇雲に時間をかけて量をこなすだけのコーチングになっているのではないでしょうか。

たとえば人間は60分ほどしか集中力を持続できない事が知られています。つまり、練習時間も60分前後にすべきなのです。であるならば、まずは長時間練習を減らし、必然的に質を高めなければならなくなります。ロボットに指導をしているわけではないのですから、人体をしっかりと理解し、それに基づいて指導方法や練習量と質を考えていくことが大切です

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