Photo by iStock

人間教育とスポーツ指導をごちゃ混ぜにする、日本式コーチングの罪

ほめて伸ばすコーチング(7)
皆さんには、人生を決定づけた監督やコーチとの出会いがあっただろうか? あるいは、あなたのお子さんにはそのような存在がいるだろうか。日本のスポーツ界に目を向けると、哀しいかな確たる理論も持ち合わせず、未だに鉄拳を用いる指導者が存在する。
日本のスポーツ界は変わらなければいけない。発売中の『ほめて伸ばすコーチング』から、スポーツ環境の改善に役立つ提言を公開。>今までの連載はコチラ

怒られながらサッカーをするなんておかしい

アルゼンチン出身の元プロサッカー選手で浦和レッズでもプレーしたセルヒオ・エスクデロは、日本で出会った選手たちに必ずアルゼンチン行きを勧める。激しい闘いの中で学ぶことこそ、成長に繋がるからだ

「でもね……数週間単位で所属チームを離れたことが裏目に出てしまう場合もあるんですよ。春休みを利用してアルゼンチンに送り込んだある中学生が、現地の監督にほめられたロングシュートを練習試合で打った途端、僕の目の前でベンチに下げられたことがありました。本当に哀しかった。チャレンジする精神を否定し、型にはめようとする指導だったからです。そういう指導者の下では、伸びる子も伸びなくなってしまいます。闘える選手なんて、育つはずもありませんよ

Photo by iStock

その中学生に対してエスクデロは、お前のプレーは間違っていないぞ。俺はチャレンジを評価する。俺が監督だったら交代なんて絶対にさせない、と声をかけた。

 

全般的に日本の指導者は教え過ぎです。また、選手を怒ることが仕事だと勘違いしている人が少なくない。日本社会全体が、厳しい指導イコールいい指導みたいな錯覚に陥っています。アルゼンチンでは、若い選手や幼い選手を頭ごなしに怒鳴ったりはしません。マラドーナもメッシも、僕も、兄も、怒られながらサッカーをやったことなんてないですよ。

僕は日本に来て、幼児から大人までを指導していますが、『足裏を使ったら怒鳴られる』『股抜きしたら怒られる』『試合中にラボーナをやったらベンチに下げられる』『ミスしたら使ってもらえないかもしれない』と選手たちが指導者に恐怖心を覚えているさまに、つくづく失望しています

そういう日本サッカー界の土壌が、今の代表にファンタジスタがいない現状を作っていますね。それに、ストライカーだって育たない。シュートを外すと監督から怒られるから、打たずにバックパスしてしまう。幼い頃から、そんなサッカー観を植え付けられてしまっているんですね」

父親が危惧した競飛王だが13歳で日本に戻り、浦和レッズのジュニアユース、ユース、トップチームと進み、その後はFCソウル、中国スーパーリーグの江蘇、京都サンガ、蔚山現代FC、栃木SC、チェンマイ・ユナイテッドと渡り歩いている。

アルゼンチンで指導者のS級ライセンスを取得する際には、心理学も勉強します。試合に出る選手だけでなく、メンバーから漏れた選手への接し方、モチベーションの上げ方、効果的な競争の仕方などをしっかり学習するんです。

ロシア・ワールドカップには、監督として5名のアルゼンチン人が出場しました。母国アルゼンチンを背負ったホルヘ・サンパオリ、コロンビア監督のホセ・ペケルマン、ペルー監督のリカルド・ガレカ、エジプト監督のエクトル・クーペル、サウジアラビア監督のフアン・アントニオです。

彼らに共通しているのは、雰囲気作りが抜群に上手い点です。選手に自信を付けさせることに長けています。心理学を学習したうえで、それぞれの選手の心に響く言葉を掛けるから、評価を得ているのだと僕は感じますね。日本の指導者ライセンスにもぜひ、心理学を必須としてもらいたいです

編集部からのお知らせ!

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/