“コーチライセンス=お金儲け”の日本でスポーツが発展しないワケ

ほめて伸ばすコーチング(5)
林 壮一 プロフィール

ビギナーの小学生にこそ正しい指導を

吉田は今でもバスケットコートでボールが弾む音がたまらなく好きだ。バスケットコートを足の親指で掴めと習った、中学生時代の原風景が蘇る。そうしなければ動けないと指導され、体に染み込ませた。コートで流した汗と涙の日々は、何物にも代えられない財産である。だからこそ、バスケットボールを愛する少年少女が健やかに育つことを望む。元全日本監督の視線でミニバスを見詰めると、やはり奇異な物に感じる。

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ビギナーである小学生を間違った方向に進めてしまっていることも、全日本の低迷に繋がっていますね。最近はインターネットの普及により動画でお手本が見られますから、その点は喜ばしい。ですが、考える力を養い、メンタルも鍛えなければいけない。日本バスケットボール協会は、昨今、コーチライセンスを発行していますが、講習会をやって、カネを集めることを第一目的としているんですね。単なる協会のビジネスなんですよ。

 

そんな指導者たちが、預かった少年少女の現状をくみ取れているのか? できていないのに、自分の知識だけを押し付けている。その繰り返しですよ。指導者に言われた課題がマスターできていないのに、さらに新しいテーマを与えられる。前の課題と今日の課題に関連性がない。だから子供たちは迷う。迷うから、頭に入り辛い。身に付かない。小中高と、日本は負の連鎖に陥っていますね

私が気になっていた、日本独自のミニバスルールについても訊いた。

「バスケットボールは、試合開始から終了まで身体接触が続く競技です。ですから、現在のミニバスで子供たちを接触プレーから遠ざけるルールは、過保護としか表現できない。日本バスケットボール界が、組織として改善すべき点ですよ。それでも、ミニバスとBリーグは友好関係でしょう。バスケットボールを知らないボランティアコーチや小学生たちがBリーグを見に行かなければ、会場が埋まりませんから」

帰化選手の活躍により、全日本男子は辛くも東京五輪の出場権を得たものの、アジア圏内ですら強豪ではない。吉田が監督を務めていた時代はアジアで負けなかっただけに、その体たらくに目を覆いたくなる。吉田が監督の座を降りたモントリオール後から東京まで、全日本男子は実に44年間も五輪を逃し続けた。アジア予選において、技術、メンタル、頑強さと他国に凌駕されていた。日本イコール弱い、が共通認識だった。

バスケットボールって、本来、楽しいスポーツなんです。軍隊のような練習メニューじゃダメですよ。技術を体得したら、そこでまたリスタートして進展していかねばならない。日本は学校教育の中にバスケットボールがあって、まずは体育教師の言う事を聞け、みたいなところから出発しますよね。その教育の質と人材難が、日本のバスケットボールの発展を阻んでいるように私は感じます

次回は『問題だらけのパパコーチ』です。
▽『ほめて伸ばすコーチング』が本日発売! WEBでは紹介できないエピソードも満載です。
レッドカード1    日本の常識は世界の非常識
レッドカード2    その暴力、犯罪です
レッドカード3    夢をつみとる大人たち
レッドカード4    子供は命令では動かない
レッドカード5    問題だらけのパパコーチ
レッドカード6    なぜ日本人は「バックパス」するのか
未来への提言1    練習は「量より質」
未来への提言2    スポーツが非行を防ぐ
未来への提言3    ジョン・ウッデン「成功のピラミッド」に学ぶ
未来への提言4    スーパースターからの伝言
未来への提言5    組織を変えるより個人の意識を変える
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