“学ばない”無能な指導者が奪う、子どもたちの未来

ほめて伸ばすコーチング(4)
林 壮一 プロフィール

暴力コーチを甘やかす周囲の環境

2020年1月にはB1に属する島根スサノオマジック監督のパワーハラスメントが公となり、職務停止2ヵ月のペナルティーを受けることとなった。Bリーグは件の監督の暴走を止めなかったとして、クラブに30万円の制裁金、GMにも10万円の制裁金と譴責、アシスタントGMにも譴責処分を科した。

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スサノオマジックの監督も桜宮高校の元バスケットボール部顧問と同じ日本体育大学のOBで、学生時代からチームメイトに対し、暴力行為を繰り返していたそうだ。この種の人間にプロチームの指導などできるはずもない。しかしスサノオマジックは、CEO自らが「正直、頼もしいという印象を持っておりました」と話し、たった2ヵ月の謹慎で、この男を復職させてしまう(シーズン開始から10試合指揮を執った後、成績不振を理由に辞任したが)。

元全日本男子バスケットボールチームの監督である吉田正彦は、本件について怒りを込めて語る。

プロコーチの行為としては、あまりにもお粗末ですし、制裁も甘いですね。こんな男は永久追放にすべきです。スサノオマジック監督の人間性が治るものでもないでしょう。監視の目が緩んだら、絶対にまたどこかでやりますよ。プロ化したとは言え、リーグの仕組み自体が、まだまだ未熟です。コーチの役割をきちんと学習していたら、選手に暴力などとても振るえませんよ。

桜宮高校の元顧問も、指導の場で傷害事件を起こしてしまった犯罪者です。殴られて自分は成長したなんて、勘違いも甚だしい。彼らのように問題を起こすコーチは、自らの体験を伝えているに過ぎません。それしか知らないんですね。他者の哲学から学ぶとか、コーチとして新たに学習して引き出しを増やすことができない人間です

バスケットボール指導者のバイブルとされる、名伯楽、ジョン・ウッデンのピラミッド理論を読み込み、現場に活かしているコーチなど、日本にはほとんどいないだろうと吉田は溜息をついた。

一流のコーチングを身に付けていれば、選手がいいプレーをした時に、自然とほめ言葉が出て来るものです。何も殴る必要などないんですよ。私もジョン・ウッデンのコーチ論を学びましたが、パワハラコーチたちはウッデンの名前さえ知らないでしょう。ウッデンを少しでも齧っていたら、殴ろうという発想になるわけがない。暴力や人格否定ではなく、もっと選手に刺激を与えるようにやるべきです。選手にできないことをやれと言うのはナンセンス。選手の特性を鑑み、テーマを与えてやることが肝心です。

レイアップシュート一つにしても、相手の頭の上から、下から、ブラインドからと様々なパターンがある。〇〇をマスターしておけば、この3つはできる、ということを教え、幅を広げていかねばならない。そのうえで、瞬発力や持久力を補強していくんですね。選手が一つ課題をクリアしたら次のテーマを与える。壁を超えられないのなら、その原因は何かを説明してやる。桜宮高校の元監督はやり方だけを伝え、自分のイメージに合わないと殴っているんです。それは無能な指導者のやることです

 
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レッドカード1    日本の常識は世界の非常識
レッドカード2    その暴力、犯罪です
レッドカード3    夢をつみとる大人たち
レッドカード4    子供は命令では動かない
レッドカード5    問題だらけのパパコーチ
レッドカード6    なぜ日本人は「バックパス」するのか
未来への提言1    練習は「量より質」
未来への提言2    スポーツが非行を防ぐ
未来への提言3    ジョン・ウッデン「成功のピラミッド」に学ぶ
未来への提言4    スーパースターからの伝言
未来への提言5    組織を変えるより個人の意識を変える
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