EC業界で世界を席巻しているアマゾン(Amazon)が、ついに製造業に進出してきたということをご存じだろうか。すでに「アマゾン・モニトロン」というサービスを開始して、モノづくり業界に衝撃を与えている。当然、日本のお家芸である「製造業」への影響は必至。その実力を見誤れば、日本企業は“総崩れ”させられる可能性すら出てきた――。
「アイポッドの悲劇」が再び
日本の製造業者たちは「アマゾン・モニトロン」について、どう考えているだろうか。
万が一「生産技術は、日本の知識・技術が圧倒しており、アマゾンにそれを実現させるプラットフォームを作ることなどできやしない」と考えているようなら、いますぐ考えを改めるべきだろう。
アマゾンはその製造技術の領域から攻め込んできては、いないからである。敵が攻めてこない城門を必死に守り、敵が攻めてくる城門には兵を配置しない。こうした戦略の誤りを日本はそう遠くない過去に犯したことがある。
アップルが、「アイポッド」をリリースした2000年代初頭の頃を思い出してほしい。

アイポッドはデジタル化された何万曲もの音楽を配信サービスの「iTunes」よりダウンロードする。ソフトをCDで再生していた従来の音楽プレイヤーとは一線を画すものだった。
ところが、日本の電機メーカーはこの革新性を見誤る。アイポッドの機器を見た日本メーカーは、「ハードとしての技術は特段画期的なものが導入されているわけではない」と見くびってしまったのだ。
実際、「アイポッドのようなハードは、簡単に作れる」と言わんばかりに、多くのメーカーが参入したが、彼らは今、見る影もない。その理由は、日本メーカーがアイポッドを「ハードの戦い」と勘違いしてしまったことにある。
今では当たり前の話だが、アップルが仕掛けたのはハードとソフトとサービスを駆使した「音楽配信」というサービスだった。アイポッドは「ハードの戦い」ではなく、「サービスの戦い」だったのだ。