菅義偉に首相はムリだった。なのに、なぜ「菅降ろし」が起きないのか

麻生、安倍…自民重鎮の策動「全内幕」
戸坂 弘毅

今は支えたほうが得策

麻生は、昨年末の時点ですでに菅政権を全力で支えるとのスタンスを明らかにしていた。1月に安倍の自宅を訪ねて2人だけで話し込んだ際は、「菅の下で衆院選を戦い、その後の総裁選でも再選させて任期を全うさせるべきだ」と説いたという。

ある安倍側近は、「麻生さんは菅首相に4年やらせるべきだと言うんだよね」という安倍の言葉を聞いている。だが、その時点では、安倍は菅の下での衆院選には同意したものの、総裁再選には賛意を示していなかった。

2月1日、麻生側近である国会対策委員長代理の松本純が、緊急事態宣言下に銀座のクラブを訪ねていたことが週刊誌で報じられたことなどを受け、自民党を離党した。離党させるという厳しい対応を決めたのは党執行部と菅首相で、事前の相談を受けなかった麻生は激怒したという。これを伝え聞いた安倍は、この「事件」をきっかけに麻生が菅と距離を置くことに期待を示す発言を漏らしていた。

ところが麻生はそれでもスタンスを変えなかった。4月の日米首脳会談の前には菅と昼食を共にして丁寧なアドバイスを送った。菅も麻生の助言に従って、首脳会談後の共同記者会見でバイデンよりも先に自ら台湾海峡の問題に言及するなど、麻生に最大限配慮。2人の関係は傍目にも親密度が増した。

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菅としても、幹事長の二階俊博が政権奪取の最大の功労者であるとはいえ、所詮二階派は党内第4派閥にすぎず、高齢の二階には衰えも目立つ。党内第2派閥のオーナーである麻生を取り込めば、安倍も単独では自分に反旗を翻すことができないとの計算もあるのだろう。

菅が麻生に接近すればライバルの二階が不快感を示すことは分かっているが、それでも菅は麻生に対して最大限、気を遣う。それは麻生のプライドもくすぐる。その2人の様子を目の当たりにして安倍は宗旨替えを余儀なくされた。麻生と反目して菅降ろしに走っても勝ち目はない。そうであれば、今はとりあえず菅政権を支える姿勢を鮮明にしておく方が得策だ――こう考えたのだ。

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