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菅義偉に首相はムリだった。なのに、なぜ「菅降ろし」が起きないのか

麻生、安倍…自民重鎮の策動「全内幕」

(ジャーナリスト、文中敬称略)

安倍前首相「菅支持発言」の深層

菅義偉という政治家はどう考えても宰相に相応しい人物ではなかった――というのが今の世論だろう。

一時は小康状態を保っていた内閣支持率は5月に再び急落し、各社の調査とも「不支持」が「支持」を大幅に上回る。毎日新聞の調査では支持率が31%まで下落したが、官邸にショックを与えたのは「いつまで首相を続けて欲しいか」との質問に、87%もの有権者が「今年9月の自民党総裁任期までに辞めて欲しい」と回答したことだった。秋以降の菅の続投を支持する有権者はわずか1割だったのだ。

ところが、そうした国民の声に逆行する発言が自民党の最有力議員から飛び出した。前首相の安倍晋三だ。

 

5月3日夜、BSフジの番組に出演した安倍は、今年9月の自民党総裁選について、「昨年9月に総裁選を実施したばかりだ」「1年後にまた総裁を代えるのか。菅さんが当然、首相の職を続けるべきだ。党員ならば常識を持って考えるべきだ」などと強い調子で再選支持を表明した。

自民党最大派閥・細田派の事実上の領袖である安倍の発言だから、表立って批判する者はいない。だが、「菅の下で選挙を戦って大丈夫なのか」との不安の声が渦巻く中での発言だったため、党内では驚きと落胆の声が広がった。

衝撃は、安倍に近い議員たちほど大きかった。安倍は菅政権発足後、「敵基地攻撃能力」の保持の検討など自らが推進し、菅政権に引き継いだ保守的政策をないがしろにする菅に不満を漏らしてきた。自らの再登板のバックボーンとなった保守系議員で作る「創生日本」などを基盤に、菅の政権運営を牽制する構えも示してきた。

「創生日本」の中核議員は「保守思想に思い入れがなく、中国や韓国との関係も無原則になりがちな菅首相に圧力をかけていく」と語っていた。菅は、'05年衆院選での新聞社のアンケートに「女性天皇に賛成」と答えた前歴もある。それゆえ、安倍に近い保守系の議員たちの間では、とくに菅に対する不満が強い。

その安倍は、今年1月に自宅を訪れた副総理・財務相の麻生太郎から滾々と説得された結果、「次期衆院選は菅首相の下で戦うしかない。選挙前にガタガタしても野党を利するだけ。今は全力で菅政権を支える」と側近たちに宣言するようになってはいた。

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