Photo by iStock

新薬開発の裏に数学あり!「偶然」を読み解く統計学のききどころ

統計学を学べば「俯瞰力」が身に付く!

ビッグデータ社会と呼ばれる昨今。購買データなど膨大な情報をどう活用するかが企業業績を左右する時代になりました。本質的でない情報を切り捨て、全体的な傾向を探るにはどうすれば良いか。そのための数学的な方法を提供してくれるのが統計学です。

今回は難しい数式や公式も計算も徹底的に減らすことで、数学的な思考のエッセンスがみるみる分かる現代新書の最新刊『数学独習法』より、統計学がどのような考え方に基づき、我々の生活にどのように役立っているのか、新薬の臨床試験を例に解説した1節を特別に公開します。

関連記事:文系のあなたにこそ知ってほしい、未来を生き延びるための数学独習法

大きな視点で俯瞰してとらえる

「木を見て森を見ず」ということわざがあるように、細かい点に注意が行きすぎると、本質を見誤ってしまうリスクが高まります。膨大なデータを丹念に収集しても、それだけでは情報量が多すぎて、具体的なアクションにつなげるのは難しいでしょう。意思決定に活用するには、情報量を減らし、全体像にフォーカスすることが肝要です。

仕事をする上でも、全体感を持たず枝葉末節にこだわりすぎると、うまくいかないことが多いものです。仕事がデキる人は、まず全体像をとらえた上で、「何に注目し、何を捨てるか?」を考えます。多くの業界では、新人のころは電話取りや事務作業などで業務に慣れることから始めますが、職階が上がるにつれて、ビジネスの全体像に対する理解、いわゆる「俯瞰力」が求められるようになっていきます。

社長や役員にいたっては、俯瞰力の有無が会社の命運を左右することになるでしょう。数学の世界では、膨大なデータの全体像を把握する「俯瞰力」を生み出す方法論が、「統計学」という理論体系にまとめられています。

 

集めたデータでわかること

例えば、表1-9のような購買データがあったとしましょう。このままでは情報の羅列に過ぎませんが、購入者の年齢分布だけに着目してグラフ化すると、図1-10のように10代の購入が最も多いことが分かります。

統計学では、グラフの最も高い部分を「最頻値さいひんち」(頻度が最も高いという意味)と呼びますが、この場合は10代が最頻値ということになります。データによると、この商品は若い人に受けがいいという仮説が成り立ちそうです。そこから、学校近くの店舗でこの商品の棚面積を拡大しようとか、具体的な判断につなげることができます。

このように、余分な情報を切り落とし、全体の散らばり具合だけを見るのが統計学の考え方です。そうすることで俯瞰力が発揮され、特徴がつかめるわけです。先の例では、年齢の散らばり方だけに注目することで、その商品が10代に受けがいい(10代が最頻値である)ことが分かりました。端的に言えば、

統計学=全体を俯瞰する道具

ということです。

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/