「左翼」の時代が来る!分断が加速する今こそ“左派の思考”に学べ

池上彰・佐藤優が語る「左の教養」
池上彰×佐藤優

友愛を取り戻すための「左の教養」

佐藤 もう少し原理的な説明をすると、人類が近代以降に重視してきた「自由・平等・友愛」という3つの価値がありますよね?

この3つは、自由を重視すると格差が拡大して平等ではなくなるし、平等を重視すると社会から自由が失われていく、しかし自由と平等の間で、友愛(フランス語の「fraternité」。「博愛」「同胞愛」などとも訳されるが、皆が他人を兄弟のように愛することを指す)が二者の調整原理として働くことでようやく社会が安定するという関係にあります。

一方で現代の社会からは、その調整原理としての友愛が失われて機能しなくなっています。だから、友愛に代わる調整原理としての左翼思想が必要とされる時代が来るのではないか、と思っているのです。

こうした潮流は日本国内だけを見ていると実感が湧きにくいかもしれませんが、世界的に見ればすでに顕在化しています。

たとえば、10代のスウェーデン人少女グレタ・トゥーンベリさんを旗印とした地球温暖化に対するグローバルな抗議運動、あれなどは、私は現代版の左翼思想、エコロジカルになったマルキシズムだと思います。

グレタ・トゥーンベリさん(photo by gettyimages)

あるいはトランプが目の敵にしていたANTIFAという運動にしても、「反ファシズ
ム」を掲げた、国境を越えた人民統一戦線と捉えることができます。

それにアメリカではいま「社会主義(socialism)」という言葉が頻繁に用いられるようになっています。伝統的に社会主義に対して抵抗感の強いアメリカでこのような事態が起こっていることの意味を考えなければなりません。

池上 フランスでは、一般の国民たちが黄色い反射材でできたベストを連帯の印として身につけ、燃料税の値上げに抗議したり最低賃金引き上げを訴えたりするデモが2018年に始まり、2021年現在も続けられています。この「黄色いベスト運動」もそうした潮流のひとつでしょうね。

佐藤 そうです。ですから左翼運動は世界的に見れば明らかに復活の兆しがありますし、その波は遅かれ早かれ日本にも必ずやってきます。だからこそ今のうちに、左の教養を学んでおく必要があるのです。

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