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「左翼」の時代が来る!分断が加速する今こそ“左派の思考”に学べ

池上彰・佐藤優が語る「左の教養」
日本の左翼は何を達成し、なぜ失敗したのか?ーー忘れられた近現代史をたどり、激動の時代に求められる「左翼の思考」を問い直す新刊『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』が刊行されました。池上彰、佐藤優両氏が語る、いまこそ「左翼」を考えるべき理由とは?

コロナ禍で拡大する格差と貧困

佐藤優 今回の対談を通じて、私は日本の近現代史を「左派の視点」から捉え直す作業を池上さんとやってみたいと考えています。

なぜ今それをしたいのかというと、まず一つ目の理由として、私は「左翼の時代」がまもなく再び到来し、その際には「左派から見た歴史観」が激動の時代を生き抜くための道標の役割を果たすはずだと考えているからです。

池上彰 たしかに近年、白井聡さんの『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)や、斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』(集英社新書)など、マルクス主義を新たな視点から捉え直し、解説した本が話題になることが増えていますね。

2013年にフランス語で刊行され、翌14年に日本語翻訳版が出てベストセラーになったトマ・ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房)にしても、世界各国で起きている格差の拡大について分析した本でした。

佐藤 マルクスの読み直しが盛んに行われているのは、格差や貧困といった社会矛盾の深刻化が背景にあるからにほかなりません。特に2020年からの新型コロナウイルスのパンデミック以降は、格差がさらに拡大し、命の問題に直結するようになってきました。

2020年には自殺者が11年ぶりに増加に転じ、特に女性の自殺者が前年より885人も増えました。この事実からは、以前から非正規など不安定な雇用環境で働いていた人たちが、コロナという災厄の影響を真っ先に受けている現状が透けて見えます。

格差の是正、貧困の解消といった問題は、左翼が掲げてきた論点そのものです。

本来ならばこうした不公平・不公正は民主主義的な制度・手続きのもとで調整され、矛盾を解消していくべきです。しかし現在は、その民主主義そのものが機能不全に陥ってしまったことで難しくなっています。

特に、冷戦終結以来長く「民主主義の模範」とみなされてきたアメリカ型の民主主義に至っては、極端に大衆扇動型の指導者を誕生させたこともあって、社会の矛盾を是正するどころか、今や制度自体が社会に分断を生む元凶なのではないかという疑念さえ持たれるようになってしまいました。

池上 2021年1月にトランプ前大統領に扇動された群衆が暴徒と化してアメリカ議会議事堂に突入し、警官を含む5人が亡くなりました。この事件もまた、そうした民主主義に対する懸念を増してしまった可能性は否定できませんね。

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