福祉国家、多様性。移住して感じた良さも

ーー海外移住は多くの苦労がありますが、一方で移住したから得られた良さはありましたか?

サユリさん:私は「海外で働きたい願望」があって、フィンランドを希望していたわけではないですが、広い視野では夢が叶ったのかなって。コロナ禍で一時解雇されたのは不運でしたが、無料で職業訓練校に通えて、学生ならではの優遇も受けられています。コロナ禍で授業がオンラインに切り替わったのですが、安価な学生食堂が使えなくなった代わりにレトルト食品がもらえる支援があるんですよ。

女性の働きやすさを重んじる文化で、家事育児に積極的な男性が多いのも良いなって。夫もとても協力的です。ネウボラ(※1)をはじめ、育児や教育について相談できる機関も充実しているし、学費も無料です。子どもの大学費用や教育の質を考えると、フィンランドにいるメリットは大きいなと。

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人をあんまりジャッジしないラフな雰囲気もラクですよ。仕事も細かいことは気にせず成果が出ていれば、それでOKという感じ。突発的に休むときもメールを1本送るだけです。

※1 ネウボラ……妊娠期から就学前にかけて一貫して行われる子育て支援制度、及び支援提供施設

エミさん:私もこちらに来て、「よく見せなきゃ」と背伸びしなくなった気がします。日本は人を見る目が厳しいので肩肘張ってしまいがちですが、自分らしさを素直に出していいと許容されている感じはあります。自然が豊かで水道水がおいしいのもうれしいですね。

国土面積の約73%が森林であり「森と湖の国」と称されるフィンランドでは、広大な自然に癒やされる人も多い 写真提供/エミさん

ーー今後、どのような人生プランを描いていますか?

サユリさん:もうすぐ長男が小学校に入学するので、しばらくフィンランドに留まるだろうと思っています。ただ、ここは冬の気候が厳しいですし、子どもが成人してシニア世代になったら別の国に移住するのもアリかなって。まずは資格を取得して、ライフステージに合った働き方ができればと思います。

エミさん:日本で暮らしたいと思うこともありますが、夫と我が子と一緒にいることが第一優先なので、フィンランドでがんばりたいと思っています。まずは、語学の習得から。

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たとえ自ら望んだ海外移住であっても、アウェイな国で暮らすにはストレスや心細さが伴う。簡単なことさえできなくなり自己肯定感も下がる。筆者自身も移民として北欧で暮らすなかで、移民にとって周囲の理解やサポート、国の支えがいかに大切であるかを身を持って実感した。同時に、日本で暮らす移民の気持ちに寄り添えるようになった気がする。

もし、周囲に移民が暮らしていたり、移民と接する機会があったりしたら、彼らへの理解を示し、必要であればサポートしてあげてほしい。これからより多様化していく社会では、何よりも周囲の理解が移民の助けになるはずだから。

残念ながら今回をもって、この連載は中断となるが、引き続きデンマーク・フィンランドに住む人々の取材を通じて、意義のある疑問や課題を投げかけていきたいと思う。ひとまず、これまで記事を読んでくださったみなさんに心からお礼を伝えたい。ありがとうございました。

編集/大森奈奈

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