精神を研ぎすませ体を癒やす
これぞ香りの神髄

今回、二人の対談が行われたのは「フォーブス・トラベルガイド2021」で5つ星を獲得しているザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町の「ギャラリースイート」。都心の中で豊かな自然を感じられる紀尾井町で、アートと先進機能が融合し、これからのラグジュアリーを感じさせる。☎03-3234-1111

実はそうやって、日本の香りも静かに静かに熟成されてきた。香水よりルームフレグランスやインセンスの形で進化してきたとも言える。ホテルアロマもその一つ。昨今、一流ホテルは独自にアロマを作り、ロビーをさり気なく香らせる。この撮影が行われたザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町でもフランキンセンスをベースにした至福の香りが出迎えてくれた。

「実はこれ、凄くよく考えられていて。キリストが生まれた時に三賢人が贈ったのは黄金とフランキンセンスとミルラ。フランキンセンスは預言者たれ、ミルラは医者たれとの暗示で、香水の究極の役割もじつはそこにあるのです。精神を研ぎすませ、体を癒やす……。だから私はロビーで深呼吸するのが大好き。そんなふうに自己主張しすぎない、エゴがない、自分も心地よく周囲も幸せにする……もはや香りでも私が私がという時代は終わりなのです」

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しかもこれは世界的な流れ。慎み深く、どこか献身的でもある日本の香りの神髄に世界が近づいてきたのだ。日本の香りに元来性別はなく、上質な香りほどジェンダーレスであるとの見直しとも呼応する。むしろ香りの本質は私たちのすぐ側にあったということか!

「だからこれまでずっと疑問だったのが、日本にはなぜフランスのコルベール委員会のようなラグジュアリー支援組織がないのかと言うこと。イタリアにはアルタガンマ財団があるし、イギリスにはウォルポールがある、そういう財団や組織がマネージメントしバックアップして世界に誇れる日本のラグジュアリーを発信するべきなんです」

ラグジュアリーの語源は光り輝くもの、でも繁茂、好色と言う意味もあり、時代によって定義も変化してきた。「シェイクスピアの時代はもろに好色とか淫乱という意味で使われたし、近世のフランスではまさにリュクス、奢侈や豪華さのことです。産業社会ではジェントルマンが密かに楽しむもの、秘儀的かつ排他的になっていきました。しかし究極は、その時代の人を光り輝かせるもの。とすれば世の中が決めた定義の中に押し込むのではなく、その人その人にとってのラグジュアリーがあっていいはずなのです」