さらに日本人の嗅覚がとりわけ繊細で精密であることも独特の香り文化に繋がっている。

「日本は食べ物の香料を作る技術が世界一なんですね。例えば桜餅の香りのように、食べ物の匂いを何かに似せる能力に長けている。匂いを消す技術も世界一です。なぜこれを上手にアレンジして外に出していかないのか」

消臭でも、西洋は強い香りで封じ込めたり別の匂いに転換させたりしようとし、日本は元から消し去ろうとする。匂いに対し、真逆のベクトルを描いてきたのだ。

「むしろ日本画の余白の、あの感じ、海外の密にはない“余白”こそ日本らしさであり香りのラグジュアリーなのかもしれません。多くを語らない、核心に迫らない、ロジックで語らない。だから普及しないとも言えますが」

日本の湿度や気候になじむ「深呼吸したくなる香水」が手に入る。/パルファンサトリ☎03-5797-7241

今回のジャクシュアリー100に『パルファンサトリ』という香水ブランドがセレクトされたが、そこに感じるのも余白であり、日本の感性が無理なく創造した香りであると中野さんは言う。

「ところがサトリのオーナーに伺うと、日本を意識したことはないと……。紅葉や桜ではなく、個人のルーツを正直に表現し、心地よいと思うものを形にしたら、結果として日本らしさが海外から絶賛された訳ですよね」

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