NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」宮城版ポスタービジュアル (c)NHK

朝ドラ「おかえりモネ」が震災の直接的描写を避けることで表現した「大切なものを失う痛み」

繊細な描き方だった

NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(月~土曜午前8時)の放送開始から3週間が過ぎ、全体像やテーマがあぶり出しのように浮かび上がってきた。

この朝ドラは東日本大震災の被災地の今と未来を見つめる作品である。6月3日放送の第14話と翌4日の第15話では、ヒロインのモネこと永浦百音(清原果耶、19)の震災当日の様子が描かれた。

ただし、激しい揺れも大津波も出てこなかった。それでも途方もない被害をもたらした震災が画面内から十分に伝わってきた。

脚本を書いている安達奈緒子さんは放送前にこう語っていた。

「『東北を舞台に現代の朝ドラを』というオファーでしたので、震災を描くんだろうとまず覚悟しました」(※1)

NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」宮城版ポスタービジュアル (c)NHK

確かにあの震災を描くのはどんな脚本家でも覚悟が要るはず。なにしろ同胞1万5899人が亡くなり、2526人の行方不明者の捜索活動が今も続いているのだから。

遺族や家族の人生を一変させた。多くの日本人の価値観まで転換させてしまった。現実があまりに大きすぎると、ドラマや文章にするのが難しくなる。なにより、誰かが傷つくことは避けなくてはならない。半端な気持ちでは書けない。

安達さんは最終的に震災を直接的に描かない方法を採った。考え抜いた末のことだろう。視聴者に対し、記憶の想起を促し、同時に想像力を求めた。

 

震災を初めて正面から描いたドラマは2013年度前期の朝ドラ『あまちゃん』だったが、やはり直接的には表現していない。脚本を書いた宮藤官九郎氏(50)はジオラマ(立体模型)で津波などを再現した。こちらも見る側に想像力を要求した。

くしくも現代を代表する2人の脚本家は根源的には同じ方法を選んだのである。目に映ることだけが表現ではない。

編集部からのお知らせ!

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/