浅瀬に出現した深海魚ミズウオ(左)と、海中を漂うポリ袋の破片(右)(いずれも山本智之撮影)

マヨネーズの容器も! 深海魚の「胃の中」が示す日本近海の汚染レベル

拡大するプラごみ問題をどう考えるか

深海魚が生きたまま、しばしば打ち上がる──。

そんなふしぎな海岸が、静岡県にある。銀色に輝く「深海からの使者」たち。その体を解剖すると、胃の中からプラスチックごみが次々と出てくるという。物言わぬ深海魚たちが語る、日本の海のプラごみ汚染の実態とは?

「深海魚が打ち上がる浜」を訪ねてみた

深海魚が打ち上がるという現場を訪ねた。そこは、砂利に覆われた静かな浜辺だった。

静岡市清水区の海岸で、付近には景勝地として有名な「三保松原(みほのまつばら)」がある。

深海魚「ミズウオ」がよく打ち上げられるという静岡市清水区の海岸(山本智之撮影)
地図データ:GoogleMap

この浜によく打ち上げられるのは「ミズウオ」という深海魚で、大きな個体は体長が1mを超す。

海岸は、日本一深い湾である駿河湾に面している。沖合へ向けて急に深くなる独特な海底地形が広がっているため、駿河湾の沿岸は、深海魚が岸のすぐそばまで接近しやすい(以前の記事〈「赤い彗星」も登場!?「新種の深海魚」が続々見つかる駿河湾の謎〉も参照していただきたい)。

特に、西寄りの季節風が強い日は、海の深い場所から海面近くへ上昇する「湧昇流」の影響で、ミズウオが岸近くに現れやすい。こうして浅瀬に迷い込んだ個体が、浜辺に打ち上げられるのだ。

漂着した直後は、ほとんどの個体がまだ生きている。そして、その目はエメラルドグリーンに輝いている。

 

凶暴で、ウロコのないトカゲ

ミズウオはヒメ目ミズウオ科の深海魚で、肉食性。太平洋やインド洋、大西洋、地中海など、世界各地の海に広く分布している。

銀色で細長い体形は食用魚のタチウオにやや似ているが、ミズウオには独特の大きな背びれがある。この背びれは、折りたたむことができる。

そして、「水魚」という名前の通り、筋肉のなんと94%を水分が占めている。小骨が多く、味も良くないため食用には向かず、煮込んでスープにしても、肉は溶けてほとんどなくなってしまうという。

ミズウオの学名「Alepisaurus ferox」には、「凶暴なウロコのないトカゲ」という意味がある。大きく開く口の中には、鋭くとがった歯がずらり。実に凶暴そうな面構えである。

「ミズウオ」の頭部。口の中には鋭くとがった歯がずらりと並ぶ(山本智之撮影)

東海大学名誉教授の久保田正さんは、静岡市清水区の海岸に漂着したミズウオの調査を1960年代半ばに始めた。打ち上げられた個体を、散歩中の学生が拾ってきたことが、きっかけだったという。

調査の結果、体長60cm〜1.3mの個体が毎年、数多く打ち上がることがわかった。特に多い時期は、例年冬から春が中心だ。寒い季節には、海の表層と深海で温度の差が小さくなることが、冬から春にミズウオがよく打ち上がる一因と考えられている。

ミズウオ。全長が1mを超す個体も打ち上がる(東海大学海洋学部博物館提供)

この深海魚はどんなエサを食べているのか──?

そんな生物学的な興味・関心から、久保田さんはミズウオの胃の内容物調査に取り組んだ。すると、小魚やイカといった本来のエサと一緒に、プラスチックごみが次々と出てきたのである。

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