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絶滅危機の海鳥にさらなる追い打ち!海洋プラスチック汚染が怖い理由

孤島に暮らすアホウドリの警告

21年ぶりに訪れた孤島

太平洋は白波が立っているが、前夜の眠りを妨げたうねりは収まっている。

2021年4月19日、午前11時すぎ──。大型船のデッキから、進行方向の南に目を向ける。水平線上に伊豆諸島・鳥島が浮かんでいる。21年ぶりの再訪だ。

【写真】伊豆諸島・鳥島伊豆諸島・鳥島

2000年3月、長谷川博・東邦大学名誉教授との同行取材で、東京都・八丈島から300km離れた鳥島に小型漁船で渡った。島の近くでエンジンを止めて停泊し、大きく揺れる小型漁船から海面に降ろしたゴムボートに飛び乗った。

島の大きな岩場に接岸したゴムボートから、岩場に移る。岩場は海水で濡れている。滑って海に落ちるのではないか──。幸い転落することはなかったが、そのときの恐怖が一瞬、胸に蘇った。

だが、大型船の安定感は、その記憶をすぐに打ち消してくれた。

今回も、長谷川さんは同じ大型船のデッキにいる。

【写真】長谷川博さん大型船のデッキ上の長谷川博・東邦大学名誉教授。奥には鳥島が見える

長谷川さんは、アホウドリの保護繁殖研究のため、42年にわたり、自己資金と寄付金を使って、チャーターした小型漁船に乗り、一人で無人の火山島に渡っていた(長谷川さんは「アホウドリ」は蔑称であるとして、「オキノタユウ」とよんでいる。ただし、混乱を避けるため、ここでは「アホウドリ」という名称を使いたい)。

鳥島への上陸調査は、2018年11〜12月が最後となっている。長谷川さんにとっても、それ以来3年ぶりの鳥島との再会だった。島影をじっと見つめつづける姿は、旧友を懐かしんでいるようにも見えた。

"楽園"に迫る危機

鳥島の姿が徐々に大きくなり、輪郭が明瞭になってくる。カツオドリなどの海鳥が、客船の周辺を滑空するようになった。

「オキノタユウだ!」

双眼鏡を手にした長谷川さんが声を上げる。鳥島の方角から一羽のアホウドリが向かってくる。羽を広げ、海面すれすれに飛び、グライダーのように大気を割く。

「長谷川さんを迎えに来たんだ」

この瞬間、旅に参加してよかったと思った。

【写真】鳥島のアホウドリ鳥島のアホウドリ photo by gettyimages

コロナ禍がなかなか収まらない2021年2月下旬、長谷川さんから手紙が届いた。感染対策を十分におこなうので、オキノタユウに会いに行く旅に同行しないかと記されていた。

正直なところ、当初は旅に参加するかどうか、大いに迷った。鳥島のアホウドリにはもう一度会いたかったし、しばらく会っていない長谷川さんと話がしたかった。

一方、2021年1月から全国的に新型コロナウイルス感染症の感染が再拡大し、4月予定の旅が催行できるのか心配だった。1年前、大型客船「ダイヤモンド・プリンセス号」で多くの乗員・乗客が感染した「事件」も、まだ生々しく記憶に残っている。

何日か、考え続けた。「アホウドリに会いたい」という気持ちが勝り、旅に参加しようと決心した。この旅に参加するには、事前に唾液のPCR検査を受けることが必須だった。

唾液採取後、乗船までのあいだ、「三密」を避けるのはもちろん、食品の買い物以外の外出は控え、家族以外の人とは接触しない日常生活を送った。もちろん、大型船に乗るための移動や乗船手続きの際も、密集を避け、マスクを着用した。消毒液も持参し、何かに触れるたびに手指を消毒した。

デッキに出て2時間もすると、鳥島の姿が鮮明に見える。ゴツゴツした茶の岩肌や土壌に、草の緑が広がる。双眼鏡で覗くと、島周辺をアホウドリが飛んでいる。肉眼でも、島に3ヵ所ある繁殖地(コロニー)にアホウドリの親子だろうか、白と黒の点々が数多くあることが認められた。

長谷川さんは、「オキノタユウは順調に増えている」と喜んだ。

大型船が島周辺域を反時計回りに航行していく。アホウドリが、周辺海域に集団となって浮かんでいる。飛び立って着水する鳥もいる。クロアシアホウドリやカツオドリも見える。海鳥の“楽園”に紛れ込んだようだ。気分は高揚した。

だが、この"楽園"に暮らす海鳥には、生存を脅かす危機が迫っている。

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