「個人の幸せを優先して当然」と考える社会

雇用促進プログラムやネウボラといったフィンランドの社会制度は、女性活躍を推進する一助として機能している。加えて、柔軟な働き方や周囲の子育てへの理解も女性の働きやすさを支えているようだ。

フィンランド企業の働き方は基本的に柔軟。結果を重視し、プロセスは個人に任せるような文化も見られる 画像/清水さん提供

「フィンランドではフレックスタイム制を採用している企業が多く、私の職場では7時から18時までの間で週に36時間15分働くのが基本です。残業したら、翌日以降に早めに仕事を終えたり、数日分の残業を休日として消化したりも可能です。周囲との調整が必要なこともありますが、今までは問題なく取れています。残業を休日として消化するのは、わりと一般的だと思います」

-AD-

北欧では、フィンランドに限らず残業を避ける習慣があり、子どもがいる・いないにかかわらず、多くの人が定時で帰宅。その後は友人と会ったり、趣味を満喫したり、家族とゆっくり過ごしたりするのが定番だ。

「定時に仕事を終えられるのは、仕事自体の進め方もフレキシブルであることが影響しているかもしれません。私の仕事に関していうと、あまり厳格な締め切りがありません。直属のドイツ人の男性上司が子育て真っ最中ということもあり、彼の子どもが体調を崩したら設定されていた会議が延期になることも。社内会議だけでなく、社外との会議でも同様の対応です。

こちらでは子どもが病気になったときに父親が会社を休み、代わりに母親が働くことも一般的です。父親の多くは家事や育児を“協力するもの”ではなく、“分け合うもの”と考えているようで、我が家もすべて平等。夫婦間の責任の分担が自然にできること、多くの職場に理解があり父親も母親も休みやすいことは、私にとって大きな助けになっています」

事実婚のパートナーとして18年連れ添う夫のAntti Hakio(アンッティ・ハキオ)さんと。ハキオさんは時に清水さんよりも家事育児を担ってくれるそう 画像/清水さん提供

仕事は人生の一部であり、個人の幸せを追求するためには、プライベートの充実も同じくらい大切である。子どもが病気になれば、親が看病するのは当然であり、そのために仕事を休むのは正当な理由である。「社会全体にそんな考え方が浸透しているのでないか」と清水さんは言う。

「プライベートの時間も、仕事と同じように尊重しようという文化ですね。夏休みは3〜4週間と長期で、その間は国全体がスローな雰囲気に。管理職だから休みづらいといった感じもありません。『子どもが熱を出したから、代わりに会議に出席してくれる?』と上司に頼まれることもあります。弊社の女性CEOも毎年4週間の夏休みをきっちり取りますし、社員にもそれを勧めます」

子どもを持つ女性の多くがフルタイムで仕事復帰することもあり、フィンランドの家庭では夫婦が別々の銀行口座を持ち、生活費を分担しながら、お互いに収入を管理することもめずらしくないようだ。

「専業主婦ではいけない。早く社会復帰しなければ」という女性活躍推進が進むからこそのプレッシャーもあるようだが、経済的な自立は、物理的にも精神的にも自身の豊かさを守ることにもつながるはずだ。日本でも徐々に子育てと両立しやすい柔軟な働き方が広がりつつあるが、まだまだ「仕事第一主義」の傾向が根強い。個人のウェルビーイングを尊重するならば、社会全体で許容範囲を広げてもいいのではないだろうか。

編集/大森奈奈

ご意見をお聞かせください
FRaUでは、SDGsに関する意識調査アンケートと、「FRaU×SDGsプロジェクト」の会員登録を実施中。回答された方には、今後開催予定のワークショップやパーティなどのお知らせ、SDGsの最新トピックスをメールでお送りします。