「多様性とは、好きなものを尊重しあえること」

最近、いたるところで「多様性を尊重する」というフレーズを聞くようになった。しかし、頭では分かっていても、実際、何をどのように尊重すればよいのかわからないという人も多いのではないだろうか。

漠さんもずっと「多様性とは何か」を考え続けてきた。その結果、「多様性とは、好きなものを尊重しあえることなのかな……」という答えにたどり着いたという。

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「“好き”という思いは、人が前に進む上での最強のアイテムですよね。たとえば恋。好きな人ができたら、『キレイになりたい』などと自分を磨く原動力になります。映画が好きなら、時間も忘れて映画鑑賞に没頭し、『字幕なしで見られるようになりたいから語学を勉強しよう』と努力することでしょう。

多様性とは、そういった誰かの“好き”を認め合うことじゃないかなと思うんです。互いの好きなものを尊重しあえたら、それぞれの個性がどんどん深まって輝きを放ち、相手を認めることで自分の幅も広がります。そして、誰もが暮らしやすい世の中になる。それこそが、多様性の実現ではないかと思うんです。 

先ほど、私も自分の価値観を超える人を見ると驚くことがあると言いましたが、その驚きは不快なものではなく、むしろ魅力的だと私は感じます。自分にないものを持った人に出会うと、新たな気付きを得られますし、それによって自分の価値観も柔軟に変化していくと思うからです」

撮影:三宮幹史/井手上漠フォトエッセイ 『normal?』 より

「先生が、この本を道徳の授業に使いたいって」

漠さんは、今年3月、生まれ育った隠岐の島から上京してきたばかり。初めて出会う人と接する機会が格段に増え、大いに刺激を受けているという。

一方で、これまで歩んできた道のりを振り返る機会もあった。4月には人生初のフォトエッセイ『normal?』を出版。その中では、漠さんが“普通”ではない自分に悩み、葛藤してきた半生を余すところなく綴っている。
「地元の友達から『先生がこの本を道徳の授業に使いたいと言っていたよ』と聞き、感激しました。他にも、授業の一環としてオンラインで講演してくれないかというオファーも来ていたりして、自分の言葉が世の中に届いている実感があり、とても嬉しく感じています」

今は母親の言葉を契機に自分の事を愛せるようになったが、過去においては何度も性別について違和感も抱かない人生を送りたかった――。そう願ったことは数えきれないほどあったという漠さん。しかし、こうして誰かに必要とされることで、自分が積み重ねてきたことに大きな意味を感じているそうだ。

「特に、子供たちにどのように伝えるかは、とても重要だと思っています。今の子供達にジェンダー平等に対する考え方が根付けば、その子たちが大人になった時、そしてその次の世代と、少しずつ時代が変わって、偏見が取り払われていくことでしょう。それは、ジェンダーだけでなく、さまざまな差別や生きづらさから解放され、多くの人が生きやすい社会の実現につながると信じています」

撮影/山本倫子
normal? ”普通”って何?
私らしく、あなたらしく生きられる世界を目指して――井手上漠さんの故郷・島根県海士町で撮影された80ページのフォトパートと4万字の率直なエッセイとで構成されたフォトエッセイ。

スタイリスト 鈴江英夫(H)
ヘア&メイク 奥戸彩子(GON.)

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