高校時代、女友達が「一緒に着替えよう」

漠さんがそう考えるようになった背景には、高校時代の経験が深く関わっているようだ。

「私は高校時代、もともとは体育の時間の着替えの際、男子と同じ部屋を使ったり、トイレも男子トイレを使っていました。私にとっては男子と一緒に着替えることも男子トイレを使うことにも違和感や恥ずかしさがあるので、カーテンの陰で着替えたり、他の男子生徒に出くわさないように授業中にトイレに行ったりしていたのですが、仲良くしていた女友達が『一緒に着替えよう』『女子トイレに入ってもいいんじゃない?』と、誘ってくれたんです。さすがに他の女の子たちに申し訳ないのではないかと思ったのですが、友達は他の子たちにも声をかけて了解をとってくれた。“男だから、女だから”ではなく、“漠ちゃんは漠ちゃん”という視点で私を見てくれた友達がたくさんいたことは、本当に恵まれていたと思っていますし、今も感謝の気持ちを忘れてません」

撮影/山本倫子
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たとえばトイレ問題ならば、ジェンダーに関係なく使えるトイレを増やすのも一つの解決法かもしれない。しかし、それだけでは問題の根本的な解決は難しいのではないかと漠さんは言う。

「これはジェンダー問題に限ったことではないかもしれませんが、差別をなくすために制度だけを変えても、人の思いがついていかなければ、制度がうまく機能しないのではないでしょうか。みんなが心地よく暮らすためには、制度や設備などのハード面と、一人ひとりの変化というソフト面の変化が欠かせないのではないかと思うのです」