「ジェンダーレス」はしっくりこない

2018年、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストへの出場を機に、“かわいすぎる男子高校生”として一躍注目を集めた井手上漠さん。 漠さんは、身体も戸籍も性別は男性だ。しかし、心は男性でもあり、女性でもある一方で、そのどちらでもないと自認している。

その為、彼を定義づけようと「ジェンダーレス○○」と様々なキャッキャチフレーズを付けて一言で括ろうとするが漠さん自身は、正直なところどのキャッチフレーズもしっくりきていないのだという。
「どのように感じるか、受け取るかは自由だと思うので、そのように表現してもらうこと自体はかまわないのですが、自分がジェンダーレスであるという認識はないですし、自分からジェンダーレスだと名乗ったこともありません」

漠さんは、Twitterのプロフィール欄には“性別なし”と書いている。そこからは、男か女かというたった二つの性別の中に自分を当てはめなければならないことへの抵抗感がにじみ出ている。
「私の場合、法律的には男性ですが、心は“男性っぽい”部分もあるし、“女性っぽい”部分もある。しゃべりかたや仕草、服装は可愛い系が好みではありますが、“可愛いもの=女性的”とは限らないし、服の好みはその時々で変わることもあります。

撮影:三宮幹史/井手上漠フォトエッセイ 『normal?』 より
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好きになる対象の性も、定まっていません。私自身が自分の性別を分かっていないので、好きになる相手も“男性だから、女性だから”で判断していないのです。

だから、LGBTQのどれに当てはまるのかと問われれば、“Q”のQuestioning(自分自身の性や好きになる対象の性が定まっていない)と答えるのが一番近いのかもしれません。でも、Qの自分さえ、ずっと続いていくかと言われればそれも分からない。だから、性別という型に自分をあてはめて考えたくない。“男性か、女性か”と問われたら“私は井手上漠です”と答えたいというのが本音なんです」

そう聞くと、「なんだか分りづらい……」とか「結局のところは?」などという声が飛んできそうなものだが……。
「それは、ある意味当然なのかもしれません。そう考える人にとっては、私の存在が俗にいう“普通”ではないからです。自分が考える“普通”の外にあることは、簡単には理解できなくて当たり前だと思うから。
実際、私自身も、自分の価値観とはまったく違う人や、自分の経験の幅をはるかに超える人に出会うと驚くこともあります。私はその相手と同じ状況に置かれて同じ思いを味わっているわけではないから、気持ちをなんとなく想像することはできても、真の意味で気持ちを理解しているかと問われれば、それはとても難しいと思うんです」

撮影/山本倫子
井手上漠(いでがみ・ばく)2003年1月20日生まれ。島根県隠岐郡海士町出身。15歳でジュノン・スーパーボーイ・コンテスト”DDセルフプロデュース賞”を受賞し脚光を浴びる。以降、数多くのメディアに登場する他、サカナクションのMV『モス』への出演に抜擢されるなど多方面で活躍。現在はモデル業を中心に活動。初のフォトエッセイ『normal?』が話題となっている。