「進撃の巨人」(講談社)

『進撃の巨人』の“11年7ヵ月”が日本のエンタメに示した「道筋」

世界的現象となったワケ

見上げるような巨人たちが攻めてきて、人を喰う。そんなビジュアルで話題を呼んできた人気漫画『進撃の巨人』が、6月9日に発売された第34巻で完結した。

 

都市の周りに巨大な壁を築き、身を守る人類の前に現れた巨人たちはその壁を乗り越えてくる。

衝撃的な出だしから、やがて壁の外の壮大な世界に作品は広がる。そして最終盤、物語は再び迫りくる巨人の恐怖に戻っていく。最後まで読み切って『進撃の巨人』が主人公エレンと幼馴染のミカサ、アルミンの3人の話であったことをあらためて感じさせられた。多くのファンを巻き込み、一大ブームとなった作品は、期待どおりの満足度の高い終幕となった。

エレンやリヴァイといったお馴染みのキャラクターたちが最後にどこに辿りついたのかは、是非、本編を読んで欲しいところだ。ここでは作品が完結したのを機に、『進撃の巨人』が日本の漫画やアニメ、そしてエンターテインメントにとって何が凄かったのかをあらためて振り返ってみたい。

「人」「物事」を巻き込む“作品力”

『進撃の巨人』が連載として世に姿をみせたのは、2009年9月。創刊したばかりの「別冊少年マガジン」で、当時23歳の新人作家・諫山創の連載デビュー作として開始した。

『進撃の巨人』は当初から、漫画好きの間で大きな反響を呼んだ。巨人が人間を食べる世界観とその凄まじいビジュアルが目を惹いた。口コミが評判を呼び、連載開始3年半、2013年春にはコミックの累計発行部数は早くも1200万部を超える。

さらなるブレイクとなったのは、2013年4月からのアニメ化だ。テレビ放送が始まるとその認知度と人気はさらに高まる。2015年の実写映画化も経て、ブームは雪だるま式に拡大していく。2019年12月にはコミックの全世界累計発行部数は1億部を突破する。その人気はまさに「進撃」の言葉に相応しい快進撃だ。

なぜ『進撃の巨人』は、これほどまで大きな支持を得たのか。その理由に、人や物事を巻き込む作品力があったのではないだろうか。

綿密な世界設定、複雑なストーリー。今でこそ見慣れたが、『進撃の巨人』は、本来であればなかなか取っ付き難い。そして登場人物はよく死ぬし、死に方の表現も容赦がない。こうした作品は通常は敷居が高く、人気を得るのは大変だ。

しかし一度作品に触れれば、実はそれほど気にならない。先の読めない展開、魅力的なキャラクター造形がぐんぐん心を捉えて離さない。残酷な描き方も、必然性があれば納得してもらえることを示した。何しろ2018年からスタートした第3期からテレビアニメは、NHK総合で放送されているほどだ。

ここ数年の漫画業界では、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』といった大胆な表現と過酷なストーリーを持つ作品が大ブームを巻き起こす現象が次々に起きている。その道筋を切り拓いたのは、『進撃の巨人』だったのではないだろうか。

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