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尾身会長の“五輪発言” 「政権との対立構図」報道は果たして的確だったのか?

「正しい伝え方」を考える

新型コロナウイルス感染症対策分科会のトップである尾身茂会長の東京五輪開催をめぐる発言が連日ニュースになっている。9日も国会での発言がニュース番組で伝えられた。詳しく検証してみると彼はほとんどブレなく一貫して同じ発言を繰り返していることがわかる。

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先週の日曜日(6月6日)、1週間を振り返る各テレビ番組でも「尾身発言」がトピックになった。東京五輪の開催にあたってたびたび警鐘を鳴らしているとして発言を伝え、それに不快感を示す政治家との「溝」を強調する報道が目立った。なかには「尾身の乱」などと菅政権との対決構図で取り上げた番組もあった。

メディアやジャーナリズムを専門にする研究者の間でも「科学者の言葉をメディアはどう伝えるべきか」というのは重要なテーマだ。

先日、「日本マス・コミュニケーション学会」(今回の大会で「日本メディア学会」に名称を変更)でも「科学と政治」をテーマにしたワークショップが開かれ、ここでも「尾身発言」が話題になり、その「伝え方」が議論になった。

テレビ番組でもお笑い芸人の太田光氏が「尾身発言の正しい伝え方」で持論を展開するシーンもあり、この発言をどう伝えるかは今やメディアの見識を問う“リトマス試験紙”にもなっている。

尾身会長はなんと発言したのか

尾身会長が国会で野党議員の質問に答える形で発言した内容を要約すれば以下になる。

・自分は東京オリンピック・パラリンピックを開催すべきかどうかを判断する立場にはない。

・だが、もしも開催する前提に立てば次の2つを考えるべきだ。1つ目は現在、オリンピック関係者が力を注いでいるバブル方式(=選手を含めた大会関係者を外部の人たちから遮断して、そのバブルの中で感染リスクを低くしようとする試み)。これについてはある程度は感染リスクを下げるなど、コントロールが可能だと思う。

・2つ目はバブルの外にいる、地域、コミュニティにいる人たち。普通にしていれば「人流」が増える。連休やお盆もあり、都会から地方へと人が移動し、県外への人々の動きで感染が拡大するリスクが当然ある。

・パブリックビューイングは応援している人がいれば大声を出したくなる。みんなでハグしたいということもあるかもしれない。そういうことも踏まえて慎重に考えて判断を。

・これからはもっとサイエンスやITテクノロジーなどを活用する手法を進めるべきだ。

・今の状況(パンデミック)で五輪をやるということは、普通はない。そういう状況の中でやるということであれば、オーガナイザーの責任として、開催の規模をできるだけ小さくして管理の体制をできるだけ強化すること

・私は政府や組織委員会から五輪開催について公式に相談されていない。非公式に事務局の職員が個人的な見解を聞きにきたことがある程度。自分たち、専門家は国内の感染リスクについて政府にアドバイスする立場にあるので、もし五輪を開催するならば、どんな感染リスクがあるかを評価する責任がある。なるべく早い時期に自分たちの考えを伝えたい。

発言をくわしく見ると、尾身会長は国会で野党議員の重ねての質問に答える形で、この内容を繰り返していることがわかる。

詳しい国会でのやりとりの動画は次の衆議院や参議院の「インターネット審議中継」で視聴可能だ。(同じ国会中継の動画視聴サービスなのに使い方が微妙に違う)。日付や本会議、委員会の別などを絞り込んでいけば、動画を見ることができる。
(https://www.shugiintv.go.jp/jp/)(https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php)

また、一言一句漏らさず、というわけにはいかないが発言の一部について筆者も文字起こしを行ったので、参照してほしい(https://note.com/hiroakimizushima/n/nd982f6bfecf4)

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