男女賃金格差の問題は政府に先送りされた

日本の男女賃金格差が「ジェンダーギャップ指数」の重視するようなリーダー・専門職層における男女比と連動することは、日本政府は遅くとも20年前には気づいていた。だからこそ2003年(小泉政権)の時点で、「社会のあらゆる分野において、2020 年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待する」という目標を立てたのだ。しかし、2020年時点で「指導的地位」のどの指標でも女性の割合は3割に遠く及ばず、政府目標は「2020年代の可能な限り早期に」と先送りされた

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男女賃金格差を是正するには、政治・経済分野のリーダーや管理職・専門職につく女性の数を増やすことが必須である。日本の正規・正規間の男女賃金格差のほとんどは性別人事管理と昇進差別によるものだからだ。男女の賃金格差が「能力や仕事量、選好などの違いによるもので、性差別ではない」と考えている男性にこそ本書を読んでもらいたい。職場にはびこるセクシズムがいかに女性の能力・経験を不当に低く評価しているかを構造的に理解できると思う。

ただ、「女性活躍」と称して女性の正規化と管理職以上への昇進に注力していれば、この不公正な環境は改善するのだろうか。私はそれについてやや懐疑的である。政府が20年以上かけてもこれほど結果を出せないのは、より根本的な原因があるからだと思う。『失われた賃金を求めて』は、この疑問に対しても考えるヒントを提供している。重要となるのは、「労働」と「ケア」との関係を政策の中心に据えることだ。