2020年の賃金センサスから、雇用形態別に男女賃金格差を並べてみよう。正社員の女性は、正社員の男性の76.8%の賃金しかもらっていない。正社員以外の女性は、正社員以外の男性の80.5%の賃金しかもらっていない。短時間労働者の女性は、短時間労働者の男性の79.8%の賃金(時給)しかもらっていない。つまり、「正社員」と呼ばれる無期雇用・フルタイムになれば格差は埋まると思いきや、逆に正社員同士の男女賃金格差のほうが大きいのである。

写真はイメージです〔PHOTO〕iStock

日本の賃金格差は「正規・非正規」と「正規・正規」という2重構造になっている。それは政府統計である毎年の賃金センサスから読み取れる事実だ。非正規の女性労働者を正規雇用にするだけでは解決しない分、根が深いということも分かる。それでは、この構造的に固定化された男女賃金格差をどうすれば是正していけるのだろうか。その一つの指針となる本が今年2月に出版された。韓国のフェミニスト、イ・ミンギョンが書いた『失われた賃金を求めて』(小山内園子・すんみ訳)である。

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ジェンダー後進国の日本と韓国、その共通点

韓国の「ジェンダーギャップ指数」は0.687で、156か国中102位。120位の日本よりは若干上だが、経済分野では日本より低い123位だ。OECDが公表している男女賃金格差(gender wage gap)のデータでは、OECD37カ国中日本がワースト2位(23.5%)、韓国がワースト1位(32.5%)この順位は実は1980年代から30年以上変わっていない。韓国社会と日本社会は、男女賃金格差が社会構造のなかに埋め込まれ、その是正のとりくみが遅れて世界から取り残されているという点でよく似ている。それゆえ、『失われた賃金を求めて』で語られる韓国国内の次のエピソードやデータは、日本の読者にとっても自分たちの話として聞こえる。

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女性というだけで、入学試験や採用試験の際に減点されたり、親や社会から与えられる物質的・心理的資源が少なかったりすること。

男性の同期が先に出世していくこと。

共働き家庭であっても家事・育児・介護の負担が女性に大きく偏り、昇進にかかる負荷が男女であまりに違うこと。

男性に期待が偏り、実際に成長の機会が男性に優先的に与えられること。

そうして評価され重要なポストを確保した男性が、評価する側に回り、下の男性にチャンスを与えること。

その間、女性はささやかで人目につきづらい、しかし誰かがやらなければいけない仕事をこなしていること。

女性の多い部署や職種の評価がなぜか、男性の多い部署や職種よりも低いこと。

不況時には女性が真っ先にリストラされ、セクハラやパワハラの被害を正当に告発しても社内で孤立させられ、退社させられること。

ある分野で目覚ましい成功をおさめた女性が登場すると、一発屋と決めつけられたり、成功の理由を本人の力量以外の部分に見出されたりすること。

そうしたすべての結果、女性は自らの手で野望を捨てることが「合理的」な選択となり、男性はむしろありもしなかった野望を持ってリーダーシップを発揮すること。

その背景に実態とはかけ離れた男性=「家長」モデルがあるが、実際には主たる生計維持者かどうかとは関係なく性別によって昇進しやすさが決まること。

女性の賃金は男性より割安だが、治安費用をはじめとする女性の生計費は男性より割高であること。

こうした構造が、私企業や公共部門だけでなく、フリーランスの労働者やアーティストを含めた社会全体に見られ、女性たち一人ひとりの経済力、ひいては尊厳と生存を左右していること。

……どうだろう。『失われた賃金を求めて』の内容が、日本で起こっていることと驚くほどリンクしていると感じるのではないか。