繁殖のためだけ、狭いゲージで一生を終える

活動を続けていくうちに、浅田さんは悪質な繁殖業者の存在を知ることになった。

それはペットショップで売られる犬や猫を繁殖させる業者で、優良なブリーダーに対して“悪徳繁殖業者”と呼ばれている人たちだ。ペットショップの店頭に並ぶ子犬や子猫たちの大半は、ペットオークションを経てやってくる。ブリーダーが持ち込んだ犬や猫を販売業者が競り落とすのだ。ただ、そのブリーダーの中には“悪徳繁殖業者”も存在していて、狭いケージで大量飼育するなど、その繁殖環境が以前から大きな問題となっている。

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「ボランティア団体の人たちと一緒に悪徳繁殖業者の“繁殖場”を何軒も見に行きましたが、それはもう地獄。

そこにいる雌犬は、子供を産むためだけに存在しているのです。あの子たちは人間から撫でてもらったこともなければ、おやつをもらったこともない。もちろんシャンプーなんてしてもらったこともないまま、ただ繁殖のための道具として扱われ、産むことができなくなったら処分されてしまう。

初めてその実態を知ったときは、とても現実とは思えず、夢なら早く覚めて欲しいと思ったほどでした」と話す浅田さん。現場で撮影したという写真は目を覆いたくなるほど壮絶だ。

日の当たらない部屋の中、3段、4段と積み重ねられたケージの中でじっと座っている犬たち。ゴールデンレトリバーが2頭一緒に入れられたケージもあり、その2頭には立ち上がることも、体を伸ばして寝る姿勢をとるスペースも与えられていないため、背骨が曲がってしまっている。もちろん、彼女たちは散歩に連れ出してもらうようなこともない。

全く掃除されてない糞尿にまみれた狭いケージの中で繁殖だけさせられる犬たち。写真提供/浅田美代子
ドッグフードも糞尿にまみれた状態に。給水機にも苔が生えている。写真提供/浅田美代子
ラブラドールなどの大型犬を立つことができない狭いケージに2頭入れ、背中が曲がっているケースも。写真提供/浅田美代子

また、別の現場の写真では、ケージの中だけでなく、床一面まで毛玉と汚物で埋め尽くされている。そこに大きな茶色いモップのようなものがあると思ったら、それは毛玉と糞がダマになって覆い尽くしている犬の体だった。

「これ、犬種は何ですか? ちょっと見ただけでは判別できない……」と杉本さん。こういった現場を何度も体験している杉本さんですら、その姿に絶句する。

劣悪な繁殖業者から保護されたばかりの犬。写真提供/浅田美代子
一切手入れされず、肉球に刺さるまで爪が伸びてしまっているケースも多い。写真提供/浅田美代子

「ペキニーズでした。顔も毛まみれになっているから、掻き分けないと、どこに目や鼻があるのかすぐにはわからない。足を見ると、巻き爪がぐるぐる肉球を取り巻いて、爪が肉球に刺さっているところも何カ所かありました」(浅田さん)

爪を切ったり、毛をカットしたり、トイレの掃除をして糞尿を片付けることは第一種動物取扱業者の義務。それが、これらの繁殖場では全く放棄されているのだ。

「何の手入れもされていない……これは医療ネグレクトですね。私たちのように動物と一緒に暮らしていると、彼らには本当に人間と変わらない感情があるということをより身近に感じますよね……だから、なおさらこのような状況は許せないという気持ちが強く湧いてきます」(杉本さん)