『進撃の巨人』担当編集者から見た「諫山創」の11年7ヵ月

担当編集者インタビュー
現代ビジネス編集部

――4月9日に発売された「別冊少年マガジン」5月号で、『進撃の巨人』最終話が掲載され、連載が完結しました。その時、川窪さんから諫山さんに「誰にも文句を言わせない最終回だったと思う」と声をかけられたそうですね。

川窪:そうですね。それは意図としては、まず大前提として僕は面白いと思っているんですが、その言葉の意味は「誰に見せても面白いと思ってもらえる最終回だよ」ということではないんです。

諫山創が11年7か月前に連載を始めた時に、描きたいと思った物語とか感情があったと思うんですね。それを描きたくて始めた漫画が、描きたいことを描けて終わったんだから、それは誰にも文句言われる筋合いは無いと思うから、そういう意味で「誰にも文句言う権利なんてないから、誰にも文句なんて言わせない最終回になったと思うよ」という言葉で伝えたんです。

その時はこの言葉だけ伝えたのでちゃんと伝わってなかったかもしれませんが、最終回の掲載後には批判などもあって、そのことに諫山さんが思い悩んでいたので、後日あらためてさっき言ったように「描きたいことを描きたいように描けたんだから、それを否定されても困っちゃうし、思っていたとおりに終われたんだから、それでいいじゃん」ということを伝えました。

あとは、これも後日ですがもうひとつ話したことがありました。これは諫山さん本人がかなり前に話していたことなんですが、

「『人を殺してはないけない』ということを伝えたかったら、『人を殺してはいけない』と伝えても意味ないかもしれない。だって、『人を殺してはいけない』なんて、人類が70億人いたとしたら70億人全員が知っていることなんだから、それでも殺人がなくならないってことは、『人を殺してはいけない』って言葉に意味はないのかもしれない。

だったら、『人なんて殺してもいいでしょ』という言葉のほうが、それを聞いた人が『何言ってんだよ、人を殺すなんでダメでしょ』と思う可能性があるから、結果だけ見るならその言葉のほうが意味があるかもしれない。だから、伝えたいことがあったら、必ずしも伝えたいとおりに漫画を描く必要はないかもしれない」

ということを言っていたことがあったんです。これは『進撃の巨人』のこととは関係ない話として話していたと思うんですけど。

 

その話を僕は思い出して。あの最終回について論争が巻き起こって、「虐殺を肯定している」という批判も起きました。もちろん作中で虐殺を肯定したつもりはまったく無かったので、諫山さんもかなり思い悩んでいたんですが、「でも、それは実は良いことなんじゃないの」ということを諫山さんに話しました。

「実際に戦争が起きて、人がたくさん死んでしまって、それで初めて『虐殺は良くない』となるのに比べれば、『進撃の巨人』を読んで『これは虐殺肯定漫画だ。虐殺は良くない』という気持ちが芽生えるほうが、全然良いことじゃん。だから、諫山創は虐殺を肯定したと言われても、それは『虐殺を否定したい』というムーブメントが起きているということなんだから、良いことなんじゃない」ということを、さっきの諫山さんの話を例に出して伝えました。

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