「オタク」になりたい若者たち。倍速でも映画やドラマの「本数をこなす」理由

生存戦略としての倍速試聴
稲田 豊史 プロフィール

時間や興味がなかったらスルーすればいい、とはならない。

「Z世代と呼ばれる大学生を中心とした若年世代にとっては、仲間の和を維持するのが非常に大事。とにかく共感しあわなければいけない。“共感強制力”がすごいんです。スルーはできません」(森永氏)

しかも、LINEグループは1つや2つではない。大学の友人だけで複数。そこにサークルやバイト先。さらに高校時代や中学時代の友人。なんなら小学校時代の友人までが、LINEグループで永遠につながりつづける。

「それぞれのグループから『これ、観たほうがいいよ』と作品を薦められる。自分の好みや興味として欲望を持って観るのではなく、各グループの和の維持を目的として観るのだとしたら、そりゃあ早送りでもしないと、こなしきれませんよね」(森永氏)

 

生存戦略としての倍速試聴

彼らは作品を“コミュニケーションツール”として使っている。ツールである以上、「興味がないから観ない」とか「途中まで観てやめる」という選択肢はありえない。会社員で言うなら、事前に配布された会議資料に目を通しておかないと、会議で議論に参加できず、ハブにされるのと同じだ。悪くすれば、“仕事のできない奴”扱いされて、会社での居場所がなくなるかもしれない。

それを避けるには、なんとしてでも資料は読んでおく必要がある。早送りだろうが、まとめサイトであらすじだけの斜め読みだろうが、手段は問わない。

もちろん、話題作をコミュニケーションツールとして使う傾向は、今にはじまったことではない。「観ておかないと、学校や職場で話題の輪に入れない」作品は、昔からあった。たとえば1980年代〜90年代なら、『8時だョ! 全員集合』『ザ・ベストテン』「月9ドラマ」等々。特に40代以上なら、いくらでも番組タイトルが口をついて出てくるだろう。

ただ、かつて若者が友達と触れ合うのは、教室だけだった。教室を出たら逃げられた。我が道を行くことができた。しかし今は、LINEがどこまでも追いかけてくる。逃げられない。常にレスを求められる。

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