コロナで「日本人絶滅」へのカウントダウンが現実味を帯びてきた…!

少子化は予測よりも18年早く進行
河合 雅司 プロフィール

出生数減少スピードの加速は、さらに日本社会を蝕んでいく。概ね20年後には勤労世代(20~64歳)の不足となって表れ始めるからだ。2019年の実績値は6925万2000人だったが、死亡数が想定通りに推移したとすると、2040年には2019年比で1414万人減る。これは社人研の中位推計よりも31万人ほど少ない。

 

こうした中位推計との開きは年々大きくなり、2050年には158万人、2060年には268万人ほど少ない水準となる。2050年は当初から見込まれていた人口減少分を含めると、2019年比で2210万人も減ることになり、各産業の人手不足も想定以上に深刻化するだろう。

少子化の加速で想定していたよりも早く勤労世代が縮小することの影響は、これにとどまらない。勤労世代は働き手であるのと同時に「旺盛な消費者」でもあるからだ。中位推計との開きは、その分だけ国内マーケットが早く縮小することを意味する。

しかも年を経るごとに若い世代が少なくなっていくのだから、ベビー服や学用品といった子供向けビジネスは20年も待たずして影響を受ける。少し遅れて洋服などのファッションや住宅など、若い消費者を主要ターゲットとしてきた業種に次々と波及していく。

不妊治療への健康保険適用は効果的か?

このように少子化が加速することの影響は将来に向けて果てしなく広がっていく。私が先に、現時点での傷はまだ浅いが、何年か後に「国家の致命傷」として多くの人が気づき、そうなってからでは手遅れだ、と述べたことの意味をご理解いただけただろうか。

さらにもう1つ、気がかりな点がある。婚姻件数の減少という”現時点での浅き傷”は、「社会の老化」に密接につながっていることだ。

出生数が減るスピードが速いほど高齢化率の上昇ペースも速くなり、社会としての若さを急速に失う。われわれは「社会の老化」の真の怖さをもっと知っておく必要がある。

得体の知れぬ感染症に身構えるのは自然のことだが、その正体が徐々に明らかになってもなお、必要以上に警戒したために、日本は活力を一気に失った。それは、結果的に将来に対して大きな禍根を残す。

個々人と同じで、「若さ」を失った社会は新たなストレスや変化に弱いものだが、コロナ禍における日本社会の姿は”社会パニック”に近く、国家が年老いたことを感じるに十分であった。欧米各国に比べて圧倒的に感染者数が少ないのに、上を下への大騒ぎとなり、政府の対策は後手に回った。

もとより政府は少子高齢化と真剣に向き合おうとしてこなかった。人口減少が始まってもなお、拡大路線の政策を取り続けてきた。コロナ禍で出生数の減少スピードが加速し始めても危機感は乏しく、菅義偉政権が打ち出した政策といえば、不妊治療への健康保険適用範囲の拡大や育休取得の充実といった程度だ。これらが重要でないとは言わないが、日本が置かれている状況を考えるとあまりにもスケールが小さい。

しかも、その政策効果は限定的である。不妊治療費の自己負担が減れば、経済的理由から断念する人が減って出生数増につながるとの思惑が政府内にはあるようだが、治療を受ける人の数や1人当たりの治療機会が多くなったからといって、妊娠に結びつく確率が比例して大きくなるわけではない。

不妊の要因は1つではないが、一般的に年齢が上がるにつれて妊娠しづらくなる。不妊に悩む人が増加した背景の1つに「晩婚・晩産」が進んだことがある。この点に手を付けず、自己負担だけ軽減してみたところでどれだけの効果があるか分からない。

先述した通り、日本の少子化は「出産可能な女性」が激減してしまう構造的要因にあり、これについてはもはや手の打ちようがない。だが、コロナ禍に伴って出生数の減少が加速した状況を食い止め、そのスピードを遅くすることはまだやり得る。これをやり過ごしたならば、日本の滅亡はわれわれが考えるよりもはるかに早く訪れる。

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