# ドラマ

『大豆田とわ子』にチラつく「不気味さ」の正体…これは“ホラー作品”なのか?

「あえて描かない」という手法が見事
成馬 零一 プロフィール

だが、小鳥遊はとわ子の会社を買収した外資系ファンド・マディソンパートナーズの法務部長であり、取締役会で、部下に対してパワーハラスメントをおこなっていたことを理由に、とわ子を社長から解任しようとする。小鳥遊の豹変は、門谷の時と同様、ラブコメが突然ホラー映画に変わったような展開だった。

しかし小鳥遊は門谷と違いビジネスとプライベートは別だと考えている。正体が明らかになった後も小鳥遊はとわ子との交流を続けており、次第に2人の距離は縮まっていく。

 

第8話でとわ子の娘・唄(豊嶋花)がテレビを見ながら「出てこないじゃん。これホラーじゃないの?」と言う場面が象徴的だが、第7話で予感させた小鳥遊の怪物ぶりはナレーションで「ツンデレ男」という言葉で処理され、ホラー化した不穏な物語は再びラブコメに姿を変わる。

これには二度驚いたが、おそらくラブコメとホラーの境界が混濁した宙吊りの状況を本作は見せたいのだろう。

つまり単純な二層構造ではなく「背後に隠れている見えない存在も同時に存在している」ということを本作は描いているのだ。

とわ子の母親やかごめに代表される死者はもちろんのこと、とわ子の視界から外れた会わなくなった人たちもそれは同様で、見えない人々もどこかに存在しているという世界観が、複雑に入り組んだ脚本によって提示されている。

このような多面的な面白さを持つ複雑な作品が、夜9時というプライムタイムに平然と放送されているのだから、テレビドラマはとても豊かな映像表現だと改めて実感する。

物語の先行きが見えぬまま、「あえて描かない」という作劇手法がみるみる先鋭化していく『まめ夫』は、坂元裕二の新境地と言える作品である。

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