飛込元日本代表で、水泳の瀬戸大也選手の妻でもある馬淵優佳さんが、アスリートたちにスポーツから学んだことを率直に聞いていく連載「スポーツが教えてくれたこと」。今回は2012年、体操でロンドン五輪に出場し、今は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事もつとめている田中理恵さんに話を伺った。

田中理恵さんと言えば日本を代表する体操選手だが、実は高校時代にスランプにもなり、体操の世界では遅咲きと言われる20代での五輪出場でもあった。それを乗り越えて五輪に出場し、いまも生き生きと活躍する理由を、自らも2児の母である優佳さんが「練習」「子育て」両方の面から聞いていく。その前編では「家庭」にクローズアップしてお届けする。

田中理恵さん(写真左)のYouTubeに出演した優佳さん(同右)。収録翌日筋肉痛だったというその公開は7月23日の19時の予定 
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家族全員が体操一家

2012年、ロンドンオリンピック体操競技に出場した田中理恵さん。2013年に引退し、現在では1児の母として、YouTubeやテレビでスポーツの素晴らしさを伝えている。彼女が注目されたのは、2010年のロッテルダム世界選手権。10代で活躍する選手が多い体操競技では、当時23歳での代表入りは異例と言われた。しかし、彼女は世界の大舞台でも長身を生かした美しい演技を魅せ、「個人総合に参加した選手の中でもっともエレガンスと評価された男女一名ずつの選手」に贈られる「ロンジン・エレガンス賞」を日本人で初めて受賞。体操競技の顔として注目されるようになったのだ。

まさに「エレガンス」な田中さん Photo by Getty Images

そして2012年のロンドンオリンピックには兄の和仁さん、弟の佑典さんとともに出場し活躍した。両親も元体操選手であったことに加え、きょうだいも体操選手。まさに体操一家といわれる環境に、私は考えるだけでゾッとしてしまった。私自身がコーチの父のもとで飛込競技をしていたので、家の中で窮屈な思いをしたことがあった。だから理恵さんも家の中でも外でもずっと体操のことを考えないとならない環境だったのではないかと思ったのだ。

兄の和仁さん(写真右)、弟の佑典さん(同左)と3人でロンドン五輪代表に! Photo by Getty Images

しかし、インタビューをしている中で、私の想像はことごとく覆された。むしろ、この環境だからこそ、きょうだい3人全員が五輪に出場するまでになったことがわかった。その家庭に様々な逆境を強さに変えるヒントがたくさん隠されていたのだ。

「まず物心ついたときから家の中にトランポリンが2台あったり鉄棒があったり、庭には大きなトランポリンがドンっと置いてあって。遊び道具が体操器具とかだったから、自然にお兄ちゃんが体操競技を始めて、回ったり跳ねたりしているのがかっこいい!と思って私も始めました。幼稚園のときは、お母さんが幼児の体操教室をやっていたので、見本のような感じで連れていかれて(笑)、小学1年生から真剣に習い始めました」

生まれてから当たり前のように体操器具に囲まれ、体操を指導している両親の元でごく自然に体操場で身体を動かす。指導者を親に持つ子どもの特権かもしれない。それは親からやりなさいと言われたものではなく、自然なようで必然な成り行きで体操競技に進み、そしてのめり込んだ。