“マスク”に覆われた不平等…「コロナ禍の教育格差」を直視しない“深刻すぎる”日本の実態

苅谷 剛彦 プロフィール

海外は「教育格差」に目を向けている

このような関心度の違いは、単に平均としての学習ロスに向けられるだけではない。この種の報告が行われる場合、英国では必ずと言ってよいほど、全体の平均的な結果を示すに留まらず、地域間の格差や、生徒の属性、とりわけ社会経済的な背景の違いということに着目した分析結果が示される。

先の二つの報告では、いずれも、無償の学校給食(FSM:Free School Meal)を受けている生徒、すなわち社会経済的に不利な環境に置かれた生徒と全体との違いに目が向けられる。

NFERの報告書によれば、2017年と2020年のいずれの年においても国語、算数の学力テストにおいて、全体の平均に比べ、社会経済的に不利な環境に置かれた生徒は低い得点であった。

しかも、より重要なことに、その差は2020年において拡大していた。そこから、学校閉鎖の影響は、社会経済的に不利な環境にある生徒により強く見られたことがデータによって確認された。

 

他方、EPIの報告では、学校単位で、無償の学校給食を受けている生徒が全体に占める割合をもとに、学校を3分類し、FSM生徒の多い学校(25%以上)、中程度の学校、少ない学校(10%以下)の比較を行っている。

この報告書では、前述の通り、同じ生徒の複数年のデータ(パネルデータ)を用いることで、コロナの影響がなかった場合に期待される得点と2020年11月時点の実際の得点との差をとるという方法で、学校閉鎖の影響を見ようとする。

分析の結果、FSM生徒の少ない学校でも若干の学習の遅れは見られたが、FSM生徒の多い学校や中程度の学校ではそれ以上の遅れがあった。NFERがとった方法とは異なるが、ここでも社会経済的に不利な生徒の多い学校で学習の遅れが、学校閉鎖の影響がなかったと想定した場合よりも大きく出ることがデータによって示されたのである。

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