“マスク”に覆われた不平等…「コロナ禍の教育格差」を直視しない“深刻すぎる”日本の実態

苅谷 剛彦 プロフィール

NFERの報告書によれば、英国の学齢で小学2年生に当たる生徒では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、国語、算数とも、2017年に比べおよそ2か月程度の学習の遅れが生じたことが明らかになった。比較可能な学力データによる、統計的な手法を用いた推計結果である(単に同じテスト問題の得点の差を見るわけではない)。

他方、EPIの報告では、第3学年から第9学年までの学習の遅れを統計的な分析を通じて推計している。

前年度の同じ生徒の学習成果のデータを用いることで、統計分析によって、同じ生徒が、コロナの影響がない場合に2020年に得られたと推計されるテストの得点と、実際の得点との差を取り、それらをもとに平均的な学習の遅れを計算するという、NFERに比べてより複雑な分析手法を用いている。

写真はイメージ/photo by iStock
 

その結果、国語においては学年による若干の違いはあるが、ほぼ2か月程度の学習の遅れがあったと結論づけている。また小学校段階の算数については、国語より1か月分多い、3か月程度の遅れがあったと推計している(中等教育段階の数学についてはサンプル数の関係で正確な推計ができないと指摘される)。

これら二つの報告で重要なのは、日本とほぼ同じ時期に行われた学校閉鎖(2020年3月〜5月)の学習への影響について、英国では2021年の1月には、すでにいくつかの報告書が刊行され、学習の遅れについての結果が数値で公表されていたことにある。

学習の遅れに早めに対応するためには、できるだけ迅速に実態を把握する必要がある。そのことの重要性を知っていたからである。

日本で同様の分析や報告が行われた形跡を、寡聞にして知らない。両国間で、全国的な規模での学校閉鎖の時期や期間がほぼ同じであったこと(ただし、新年度が何月に始まるかといった違いはある)をみれば、教育を担当する行政や調査機関、マスコミや社会の関心度の違いのあらわれといえるだろう。

さらには、いざというときに、このような分析を可能にするデータの蓄積や分析手法の開発という点での両国間の能力の違いのあらわれだということもできる。

関連記事