“マスク”に覆われた不平等…「コロナ禍の教育格差」を直視しない“深刻すぎる”日本の実態

苅谷 剛彦 プロフィール

英国が取り組むラーニング・ロスの分析

休校期間が長引けば、たとえ一部の学習がリモートに置き換えられたとしても、学習の遅れや学習の漏れが政策担当者やメディアの関心を集めるのは必然だ。

コロナ以前から児童生徒(以下、「生徒」で統一)の学習成果(attainment;日本的に言い換えれば「学力」 以下、学力と互換的に用いる)の変化を比較可能な方法で収集・分析し、データを蓄積してきた英国では、2020年の後半以後、それらのデータを駆使し、コロナ禍での学校閉鎖が生徒の学習に及ぼした影響を捉える研究が行われた。

そして、いくつかの報告書がすでに公開されている。ここで簡単にみるのは、2021年1月に発表された二つのレポートである。英国の事情の紹介と言うより、このような詳細な研究が行われ、それが社会の関心を集めていることに注目し、日本との違いを明らかにするためである。

報告のひとつはNational Foundation of Education Research(NFER)による分析結果である*1

NFERは、政府から独立した第三者的性格を持つ研究機関として、教育研究をもとに政策提言をおこなってきた。そこには独自に実施してきた学力調査も含まれている。後述するが、過去との比較を通じて学力の変化を捉えることのできない日本の全国学力・学習状況調査とは異なり、当初から変化を捉えることを念頭に設計された調査である。

その経験をもとに、2017年に収集した独自データとの比較により、2020年前半の学校の休校措置が、6−7歳に該当するキーステージ1の生徒の学力に及ぼす影響を分析している。比較したのは2017年の11月と2020年の11月に行われた学力テストのデータである。

 

もうひとつは、これも第三者機関として教育に関する政策研究を行ってきたEducation Policy Institute(EPI)と、学習評価・分析のソフトウェア開発などを行う民間会社のRenaissance Learning社による共同の報告書である*2

この報告書では、英国の学校で広く使われているStar Assessmentsと呼ばれるReading(国語)と算数・数学の学習成果について、2019年11月のデータを用い、2020年の11月時点での結果との比較を行い、学習の遅れ(ロス=損失)の推計を行っている。

過去の学力調査との比較を可能にするデータだからこそ、このような推計ができる。興味深いことに、この報告書は、英国教育省の著作物として刊行されている。

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