北朝鮮の政治犯強制収容所のことをニュースで聞いたことがある人もいるだろう。北朝鮮政府はその存在を否定しているが、脱北した元収容者や元看守がそこでの体験を証言しており、現在もなお12万人もの人々が収容されているという。

強制収容所に収容されて解放された北朝鮮国民、日本に生まれて60年代から70年代に北朝鮮に渡った女性達、元警備員で脱北し韓国でNGOを運営している人などに取材を行い10年もの歳月をかけて制作されたアニメ映画『トゥルーノース』が6月4日に公開される。強制収容所の凄惨な実態とともに「生きることとはどういうことか」を問いかけた本作は、世界中の映画祭で絶賛された。

監督は本作で初めてアニメ映画を制作した清水ハン栄治氏。あまりに政治的な内容なため、各国の助成金や投資が得られなかった彼は、制作資金のほとんどに自分の貯蓄をつぎこんだ。在日コリアン4世の清水ハン監督はなぜ、この映画を作りたかったのか。作品や自身の在日アイデンティティに対する思いについて、率直に語ってもらった。

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日本人拉致被害者もいる強制収容所の「日本人村」

本作は、1959年から1984年まで続いた「在日朝鮮人帰還事業」で北朝鮮に渡った家族が強制収容所に連行される物語だ。金正日体制下、父親は政治犯として逮捕され、母子は強制収容所に連行された。極寒の収容所は、幼い子供から老人まで食事もろくに与えられず、拷問、強姦や強制労働が渦巻く地獄絵図と化していたが、そんななかで母ユリは、息子ヨハンと妹のミヒに“人間らしく”生きることを教える。だが、ヨハンは生き抜くために体制側へつくように……と、いうのがあらすじだ。

『トゥルーノース』より

映画の中で、息子ヨハンが収容所を見学にきた北朝鮮の子供達に罵られる場面がある。元被収容者によると、強制収容所には日本からの移住組が住む「日本人村」と呼ばれる区域があったそうだ。そのなかには、日本で著名だった音楽家、ボクサー、朝鮮総連の教育関係者や彼らの日本人妻、そして拉致被害者などもおり、その数は数千名にも上ると考えられている。

監督は聞き取り調査から、日本人拉致被害者の女性も収容されていたという証言を知った。その女性は工作員へ日本語を教えるのを拒否したことで連行されたという。