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老人ホームの食事を拒否「超絶自己中老人」が幸せな最期を迎えた理由

その影には介護職員の献身があった

食堂での食事を頑なに拒否

今回は元会社経営者をご主人に持つAさんのお話です。

Aさんの亡きご主人は、終戦後、兄弟で食品卸業を興しました。その後、事業は順調に伸び、今では、多くの店舗を持つ食品スーパーへ成長しています。そんな企業で、Aさんは長くご主人の右腕として、経理などお金の管理を担当してきました。現在では、長男夫婦が後を継ぎ、会社をさらに大きくしています。

Aさんは、90歳。気性に問題があるため、長男夫婦の希望で老人ホームに入居することになりました。

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「来るのが遅いじゃないか? 」と、Aさんは、居室のベッドに横になったまま、呼びつけた介護職員に怒鳴ります。「家にいた時は、呼び鈴を鳴らせば隣の部屋にいるお手伝いが、すぐに来たけど、ここはダメだね。教育がなっていないよ」と怒り心頭です。

そういうと、Aさんは、背中が痒いと言って、介護職員に背中を掻くように指示を出します。「もっと強く掻いておくれよ」とか「もっと右だよ」と細かく注文を付けます。少しでもこちらが気弱になると「意気地がないね。男だろ! 」とたしなめられます。

ちなみに、Aさんの入居前カンファレンスの記録によると、Aさんの性格は「わがままで、自己中心的」と記されていました。

夕食の時間になりました。多くの老人ホームでは、食事は、全員で食堂で食べるきまりです。このホームも例外ではありません。もちろん、食堂で、全員そろって食べる理由の大部分は、老人ホーム側の管理上、業務上の都合からです。

Aさんは「大勢の中で食事をするのは嫌い。部屋で食べる」と主張します。しかし、ホーム側は「ハイ、そうですか」というわけにはいきません。最初が肝心だと考え、何度も食堂で食べるよう促します。とうとう、ホーム長まで登場し、食堂での食事を勧めましたが、言えば言うほど、かたくなに拒否です。

 

ちなみに、老人ホーム側が執拗に食堂での食事を勧める理由は、一義的には、合理的に業務を進めたいという魂胆があるのですが、決してそれだけではありません。高齢者の場合、廃用性症候群という病気を気にしなければならないからです。

長い間、外部と接触を断ち、一人で自室に籠っていると、高齢者独特の様々な病気を引き起こしてしまいます。認知症の発症や進行、またはADLの低下などです。

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