常識にとらわれない自由な働き方を知り、仕事の裏側に隠れた問題と向き合う。働くこと、仕事のことを考える、映画とドラマを3人に聞きました。

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真魚八重子 まな・やえこ
映画文筆業。最新刊に『血とエロスはいとこ同士 エモーショナル・ムーヴィ宣言』(ele-king books)。他に『映画なしでは生きられない』(洋泉社)などがある。

月永理絵 つきなが・りえ
エディター&ライター。個人冊子「映画酒場」を発行するほか、多くの媒体で連載を持つ。「映画酒場編集室」名義で書籍や映画パンフレットの編集も手掛ける。

岡田育 おかだ・いく
文筆家。著書に『女の節目は両A面』(TAC出版)、『40歳までにコレをやめる』(サンマーク出版)など。2021年初夏に『我は、おばさん』を刊行予定。

家事という労働を俯瞰する。

『ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン』シャンタル・アケルマン監督作(ベルギー/1975年)
現在のフェミニズム問題を語る際、度々取り上げられるベルギー出身の女性監督による作品。主人公は息子を育てるシングルマザー。彼女が過ごす3日間をほとんど台詞もないまま捉えた固定カメラの映像は淡々とシンプル。主婦業の傍ら行う売春すら何事でもないように、料理や掃除といった生活の一部と並列に置かれる。日々を生きる彼女の姿は力強くはあるが、同時に主婦の仕事に費やす時間を思うと改めて驚かされる。家事がいかに過酷な労働であるかを記録した貴重な一本。(selector 月永理絵)

好きなことで稼ぐとは?

『クィーンズギャンビット』スコット・フランク監督作(アメリカ/2020年)
親を喪い孤児となった少女がチェスの才能を見出されて、一気に世界レベルまで駆け上がるドラマシリーズ。それまで大人の男しかいなかった世界で、女の子がどんどん障壁をブチ破っていく様子は実に痛快、賞金で着道楽になっていく姿も最高! 少年漫画と少女漫画を足して二乗した感じ。しかしチェス以外に何もない彼女は、酒やドラッグに溺れて心身のバランスを崩したりもする。「好きなことで稼ぐ」勝負師の高揚とともに、孤独や苦悩も描かれた作品。(selector 岡田育)

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正義を貫く強さと勇気を。

『モリーズ・ゲーム』アーロン・ソーキン監督作(カナダ/2017年)
息をもつかせぬ会話劇で知られるアーロン・ソーキンの脚本&監督作品。怪我をした元スキー選手のモリーは非合法ポーカークラブに「転職」して、のちに独立。違法賭博でFBIに追われる身となるが……という実話ベースの伝記映画。賢くてタフで、向上心も経営の才もある美しい女性が、自分で決めたルールに従い、自分の城を築き、自分の正義を貫いて裁判に臨む。嫌なことがあった日に見返して、ラストの台詞「私はしぶとい」を何度でも一緒に唱えたい。(selector 岡田育)

ヘイトもまとめて退治したい。

『ゴーストバスターズ』ポール・フェイグ監督作(アメリカ/2016年)
年代大ヒットコメディのリブート作品。気のおけない仲間たちと試行錯誤しながら起業する楽しさを描く一方、メインキャストを男性から女性に変更したことによりネット上では批判が殺到。「たいして美人でもない女性だけのチームは受け入れがたい」というルッキズムやミソジニーに基づく許されない差別発言が多く向けられた。女性主導で仕事を進めると、こうも男性の神経を逆撫でするのかと絶望したし、変えていかなければならないと映画の外での騒動から思わされた。(selector 真魚八重子)